研究課題
若手研究(B)
持久力や筋力のような体力とは独立して、身体が硬い(柔軟性が低い)人では血管も硬いということが横断的に明らかになった。この結果は、柔軟性は動脈硬化と関連する体力の一つであるかもしれないことを示唆している。柔軟性を向上させる運動様式の一つにストレッチングがある。本研究では、一過性のストレッチングによる動脈壁の硬化度の変化は柔軟性レベルにより異なるかどうかを検証した。ストレッチング運動は、骨格筋機械受容器や代謝受容器を通して心血管応答を引き起こす。先行研究において、段階的に強度を上げて骨格筋を伸張させた際の心血管応答は、骨格筋の張力と正の相関関係を示すことが報告されている。柔軟性が低い者では、おそらく筋スティフネスが高いので、ストレッチング運動中の筋張力は増大し、心血管応答は大きいかもしれない。本研究では、柔軟性レベルが低い者のほうがより大きな動脈壁の硬化度に対する応答を示すという仮説を立てた。健康な若年男女24名(23.8±0.5歳、男性11名・女性13名)を対象とし、長座体前屈テストの結果から、高柔軟性群と低柔軟性群に群分けした。一過性のストレッチング運動(1種目30秒×40種目)を実施し、運動前後において上腕‐足首間の脈波伝播速度(baPWV; 動脈壁の硬化度)を測定した。2元配置の分散分析の結果、時間による主効果のみ認められた。多重比較検定の結果、baPWVは、ベースライン(運動前安静時)の値と比較して、運動45分後において有意な(P<0.05)低下を示した。以上の結果から、ストレッチングは一過的に動脈壁の硬化度を低下させるが、その低下の大きさに柔軟性レベルは関係していないことが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
予定していた実験は終了し、充分な被験者数のデータを得ることができた。研究を遂行する上での問題点も起きていない。データ分析も行い、学会などでの発表も実施した。次年度予定している研究には進んでいないため、計画以上に進展しているとは言えない。それゆえ現在までの達成度は予定通りであり、順調であると言える。
本研究課題の今後の推進方策としては、予定していた残りの研究を進め、データ分析を行うことである。これまでは予定通りに進んでおり、研究計画の変更の必要はない。研究を遂行する上での問題も起きていない。平成26年4月1日より申請者の所属機関が変更となったため、速やかに研究環境を整え、新しい環境で研究を実施するための準備を進める。また今年度は、学会や研究会へ積極的に参加し、情報収集にも重点をおいて研究を進める。その他は、予定されている通りに遂行するのみである。本年度の実験終了次第、データをまとめ成果を発表する。
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