研究課題/領域番号 |
25750367
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
吉原 大作 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (00567266)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 酸化ストレス / 鉄代謝 / 活性酸素シグナル |
研究概要 |
本研究の目的は、鉄代謝調節機構における活性酸素シグナルの役割を明らかにし、加齢に伴う鉄代謝異常の病態メカニズムを解明することである。ヒトでは加齢に伴って、組織での鉄過剰や鉄欠乏が起こる。これらの鉄代謝異常は、生体機能を低下させて老化を促進させるが、加齢に伴う鉄代謝異常の原因は明らかになっていない。これまでに申請者は、過剰な活性酸素シグナルが組織への鉄沈着の原因となる可能性があることを報告してきた。平成25年度は、培養細胞を使った実験で、脂質過酸化物である4-HNEが、鉄代謝の調節タンパク質であるIRP1を強力に不活化することを明らかにした。一般的に、IRP1は酸化ストレスで活性化することが知られており、4-HNEがIRP1を不活化するという結果は予想外であった。4-HNEなどの脂質過酸化物は、加齢とともに増加することが分かっており、加齢臭の原因物質としても知られている。このことから、申請者は、加齢による鉄代謝異常には、4-HNEによるIRP1の不活化が関与しているのではないかと予想している。4-HNEは反応性が高く、タンパク質と付加体を形成することから、IRP1も4-HNEとの付加体を形成して不活化している可能性もある。平成26年度は、実際に生体内でIRP1の4-HNE付加体が形成されるのかどうかも含め、4-HNEが鉄代謝調節機構にどのような影響を与えるのかを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養細胞を用いた実験によって、4-HNEがIRP1を不活化することを確認できた。また、4-HNEによるIRP1の不活化のメカニズムの解析を始めることができている。同様の現象が生体内でも起こり得るのかを確認するための動物実験の準備も整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、慢性的な酸化ストレスの亢進状態がIRP1の機能をどのように変化させていくのか、鉄代謝をどのように変化させていくのかを明らかにする。これにより、加齢による慢性的な酸化ストレス状態が鉄代謝に与える影響を予測するようなデータが得られると考えている。 (1)脂質過酸化物が鉄代謝調節機構に与える影響の解析: 4-HNEなどの脂質過酸化物によってIRP1が不活化されると、細胞内鉄代謝にどのような影響があるのかを明らかにする。培養細胞を脂質過酸化物や長時間の酸化ストレスに暴露して、鉄代謝関連分子の発現(リアルタイムPCR、ウエスタンブロット法)、細胞内鉄量(原子吸光法)などを経時的に解析する。 (2)ROS刺激によるIRP1の機能の経時的変化の解析: 2-a) 培養細胞を過酸化水素やDMNQ(スーパーオキシド発生剤)を添加した培地で培養(0.5~24h)して、経時的にサンプル採取を行い、IRP1のIREへの結合能、細胞内鉄量、脂質過酸化物の生成量および鉄代謝関連分子の発現を解析する。 2-b) 蛍光標識タンパク質(GFP-IRP1)、蛍光標識IRE(Cy3-RNAプローブ)を使って、ROS刺激によるIRP1の機能の変化をタイムラプスシステムにより断続的に解析する。また、脂質過酸化物の生成もリアルタイムで蛍光検出して、脂質過酸化物の生成がIRP1の機能にどのように影響していくのかを測定する。 (3)生体内における脂質過酸化物の生成が鉄代謝に与える影響の解析 加齢に伴う脂質過酸化物の増加が、鉄代謝に与える影響を解析する。SOD1KOマウス(酸化ストレス亢進モデル)と野生型マウスから組織(肝臓、腎臓、脳など)を採取して、IRP1のIRE結合能、鉄代謝関連分子の発現、組織鉄量、脂質過酸化物(4-HNE、MDAなど)が加齢に伴ってどのように変化しているのか、酸化ストレスの亢進がどのように影響しているのかを明らかにする。また、IRP1を免疫沈降で回収して、IRP1の翻訳後修飾の解析も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額の研究費が生じた理由は、計画どおりの予算より少ない額で研究が達成できたためである。 細胞培養用の血清や培地、ディッシュなどのプラスチック製品、ウエスタンブロットおよび免疫組織染色に用いる抗体やリアルタイムPCRの遺伝子実験試薬などは本研究の遂行に必須である。これらは消耗品の生化学実験試薬として購入する。また学会発表や論文作成のための費用に使用する。
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