研究課題/領域番号 |
25750370
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
村木 悦子 静岡県立大学, 食品栄養科学部, その他 (80369157)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 耐糖能 / 低血糖 / 抑うつ |
研究概要 |
本年度は、主にヒトでの観察研究を行った。 研究の同意が得られ、糖尿病診断基準に合致する者を除外した健常者6名、気分障害患者12名の計18名を対象に、約12時間の絶食下で、身体計測、安静時代謝量、気分症状、低血糖症状、抑うつ症状を評価し、採血を行った後に75gのグルコースを負荷し、30-300分後に体温・血圧・脈拍の測定、気分症状・低血糖症状の評価、採血、採尿を行った。グルコース負荷前血液より、グルコース、HbA1c、インスリン、血清脂質、アディポネクチン、レプチン、8-OHdGを測定し、グルコース負荷後血液より、グルコース、インスリンを測定した。身体の栄養状況は、安静時代謝量、身体活動量、食事調査で評価した。 対象者の属性は、健常群は男性2名、女性4名で、平均年齢は40.3±11歳、気分障害群は男性4名、女性8名で、平均年齢は46.1±13歳だった。解析結果より、血糖値は健常群に対して気分障害群において有意に高値で推移した。酸化ストレスマーカーである血中8-OHdGは、健常群に対して気分障害群で有意に高値を示した。低血糖症状と気分症状の経時変化では、気分症状は両群ともあまり大きな変化はみられなかったが、低血糖症状の中枢神経症状でのみ、健常群に対して気分障害群において、有意に高値で推移した。中枢神経症状10項目のうち、「集中できない」、「だるい」、「しゃべりづらい」の項目で、健常群に対して気分障害群で高値を示した。気分障害群には、薬物治療を行っている者と行っていない者が含まれているが、いずれも同様の結果が見られたことから、本研究結果への薬物の影響は除外できることが示唆された。今回の試験では被験者数が非常に少ないため、被験者数を増やして検討する必要があるが、現段階では、気分障害患者は健常者より食後の血糖値が上がりやすく、血糖変動も大きいため、空腹時血糖値だけでなく、グルコース負荷試験による血糖測定の必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒトでの観察研究の結果より、血糖値の急激な変化による明確な異常行動が観察できず、さらに研究機関の異動が生じたため、ヒト研究のみ実施し、動物実験による詳細な検討を行うことができなかったが、患者からの食事調査を行うことはできた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度のヒト観察研究でのデータを参考より算出した条件を基に、正常ラットにグルコースもしくはインスリンを尾静脈より投与することによっ て血糖を急激に変動させ、異常行動を誘起するグルコース、インスリンの投与量と、投与期間等を検討する。 また、ヒト観察研究より抽出された患者の食事調査を詳細に解析し、血糖変動と日常の食生活の関係を調査することによって、食餌誘発性の異常行動モデルラットの条件検討も行う。 メカニズムの解析や、ヒトへの応用までは到達できないと考えられるが、糖脂質代謝異常と異常行動との関連性は明確にしたいと考えている。
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