前年度の結果より、気分障害患者は血糖値が上がりやすかったことから、実験1ではラットに毎日定時に経口よりグルコース負荷を行い、1か月後のラットの行動観察と経口グルコース負荷試験(OGTT)、インスリン負荷試験(ITT)を行って、ラットの異常行動と耐糖能を検討した。OGTT及びITTにおいて、グルコース負荷群ではインスリン抵抗性がみられたが、オープンフィールドによる行動試験においては、両群に大きな差はみられなかった。 前年度の研究結果より、血糖値の上がりやすい気分障害患者の食生活を検討したところ、糖質および脂質の摂取過剰がみとめられたことから、実験2では高脂肪・高ショ糖食でラットを1カ月間飼育し、毎日定時に経口よりグルコース負荷を行い、検討を行った。OGTT、ITTにおいて、グルコース負荷群では著しいインスリン抵抗性がみられたが、行動試験においては両群に大きな差はみられなかった。 実験1と2より、異常行動を誘起させるにはさらに激しい血糖変動必要があると考えられたため、実験3では腹腔よりグルコースおよびインスリンを、毎日交互に投与して1ヶ月飼育し検討を行った。OGTTでは両群に差はみられなかったが、ITTにおいて負荷群ではインスリン抵抗性がみられた。しかしながら、血漿中のインスリンレベルは、グルコース負荷前、負荷後15分、負荷後120分のいずれにおいても、有意な差がみられなかった。行動試験においては投与群ではフィールド中央を横切るなどのわずかな特殊行動がみられた。 実験3の結果から、インスリン負荷によって血糖値を低下させた場合、血中へのインスリン分泌量は増加しないことが示唆され、さらにラットの異常行動は、血中へのインスリン過剰によって引き起こされる低血糖による可能性が考えられた。
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