身体活動・運動が、生活習慣病予防等に有効であることは、広く知られているが、実際に身体活動や運動の増大を目的とした“行動”を起こすことは困難である。本研究は、この“行動”に着目し、人における自発的身体活動・運動誘発のメカニズムを探ることを目的に行った。具体的には、自発的身体活動・運動行動の個人差にドーパミンシステム系に関わる遺伝子の多型が関連しているか検討することで、自発的身体活動・運動行動にドーパミンシステム系が関わっているかを検証した。対象は、一般成人約800名、アスリート約600名とした。アスリートは、特異的な身体活動・運動行動を有する集団として位置づけた。一般成人およびアスリートにおいて、ドーパミン受容体D2(DRD2)遺伝子(11ヶ所)、DRD1遺伝子(2ヶ所)、DRD4遺伝子(1ヵ所)、COMT遺伝子(1ヵ所)、DAT遺伝子(1ヵ所)の遺伝子多型を決定した。DRD2遺伝子の発現レベルを変化させることが報告されいてるDRD2/ANKK1遺伝子のrs1800497多型(C>T)は、青年期における運動習慣と関連していたことが明らかとなった(平成25年度成果)。また、この多型は、男性アスリートにおいて、アスリートレベル(国際レベル、国内レベル、地域レベル)と関連しており、TT型を有する人は国際/国内レベルであるオッズ比が1.67(95%信頼区間:1.15-2.41)であった。また、DRD2遺伝子における他の10ヶ所の多型を検討したところ、2ヶ所の多型が、3次元加速度計により評価した日常における身体活動と関連していた。また6ヵ所の多型が青年期における運動習慣の有無と関連していた。さらに1ヵ所の多型がアスリートであることと関連していた(平成26年度成果)。これらの結果から、日常における身体活動量や運動習慣にはドーパミンシステム系の経路が関連していることが示唆された。
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