研究概要 |
本研究計画は、「社会関係から撤退する傾向」は、「個人特性」「外的要因」の影響を受け、「適応・不適応」へとつながるというモデル(Rubin et al., 1993)に基づき、企図された。具体的には、本研究では、調査1-aにおいて、質問紙による調査が可能な小学4年生から、大学4年生までを対象に、本人の持つ社会関係から撤退する傾向の他に、どのような特徴が付加されると重篤な不適応の問題へとつながるのかを明らかにする。そして、調査1-bでは、「内気な児童」「おしゃべりな児童」「普通の児童」などといった仮想的児童を提示し、その受容度などを検討することで、社会関係からの撤退の緩和因・促進因を明らかにする。 平成25年度は、主に、調査1-a、調査1-bの準備(e.g., 資料収集、予備調査、測度の信頼性・妥当性の確認)を行った。具体的には、たとえば、Rubin & Coplan(2010:小野訳,2013)などの文献に基づきながら、「社会関係からの撤退」(Social withdrawal)、「シャイネス」(shyness)、「行動抑制」(behavioral inhibition)、「内向性」、対人不安・対人恐怖、孤独感の概念的区別を明確にし、その発達的機序について、アタッチメントの生涯発達と絡めながら、社会的ひきこもりへと至る道程に関する理論的考察を行った。また、先行研究に基づき、小学4年生から大学4年生までの「社会関係からの撤退する傾向」を測定するための自己報告式測度を作成し、大学生を対象に、「社会関係から撤退する傾向」と、一般他者へのアタッチメント、母親へのアタッチメント、「シャイネス」、「内向性」、「対人不安・対人恐怖」、「孤独感」、精神的健康、大学環境への適応との関連性を検討する質問紙調査を実施した。
|