前年度までにピペリダマイシン類の開環構造と推定されるJBIR-39の全合成を検討し,穏和なルイス酸であるSc(OTf)3を用いたピペラジン酸の縮合反応を開発するとともに,目的とするJBIR-39の全合成を達成し,特徴的な4連続オリゴピペラジン酸構造の構築に成功している.本年度は前年度に得られた知見を基に,マクロラクトン化による大員環形成と保護基の除去を行うことでピペリダマイシンFの全合成を検討した.まず,マクロラクトン化条件における末端セリン残基のβーラクトン化を防ぐ目的で,水酸基を保護した環化前駆体を調製し,2-メチル-6-ニトロ安息香酸無水物(MNBA)を用いたマクロラクトン化を試みた.その結果,望む環化成績体を良好な収率で得ることができたが,その後の脱保護に問題があることが分かった.脱保護について種々反応条件を検討したが,ピペラジン酸上の保護基は除去できることが分かったが,水酸基の保護基を除去することが困難であることが明らかになった.そこで,水酸基を保護しないでマクロラクトン化を行うことを計画し,反応条件について再度検討した.実際に,別途合成した環化前駆体についてMNBAを用いたマクロラクトン化を試みた結果,βーラクトンの形成を抑制することができなかったが,低収率ながら目的のマクロラクトンと考えられる化合物が生成する反応条件を見いだした.現在,最終工程である保護基の除去について検討を行っている.
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