研究課題
抗生物質アンフォテリシンBがリン脂質二重膜中でエルゴステロールと共に形成するイオン透過性チャネル複合体の構造を明らかにするため、固体NMRを用いた構造解析を行った。まず、AmB-エルゴステロールの相互作用様式に関して、13C{19F}REDOR測定から得られた分子間の距離や、エルゴステロールの構造活性相関研究から明らかになった分子の大まかな認識機構をもとに、計算化学によるAmB-エルゴステロール二分子間の位置とエネルギーを計算し、これら二分子間の詳細な相互作用様式を求めた。この結果、ステロイド骨格の平面性がAmBとの相互作用には重要であり、AmBの疎水性面とのファンデルワースル相互作用による安定化の寄与が大きいことが明らかになった。次に、チャネル複合体の核となるAmB-AmBの分子間位置関係を明らかにするため、13Cおよび19Fで標識したAmBを化学的に合成し、それらを用いた分子間REDOR測定を行った。この結果、新たなAmB分子間距離情報を得ることに成功するとともに、AmBはお互いに平行な向きに並んでいることを確認することができた。最後に、これまでに得られているAmB分子間距離を総合的に解析することで、AmBの形成するチャネル構造を計算した。AmBは回転対象なチャネルを形成すると仮定し、AmBの脂質膜に対する傾きやチャネル内径、会合数を変化させて、固体NMRの実験値との比較を行った。AmBの会合数は6分子で、かつ脂質膜法線法から少し傾いた角度をとるとき、もっとも実験値をよく再現するチャネル構造が得られた。また、この構造に先のAmB-エルゴステロールの相互作用様式を合わせることで、初めて実験に基づくAmB-エルゴステロールチャネル複合体の構造を推定することに成功した。
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Biochemistry
巻: 54 ページ: 303-312
10.1021/bi5012942
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