研究課題/領域番号 |
25750384
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
古徳 直之 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (20362618)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 活性発現の分子機構 / 海洋天然物 / 抗がんリード化合物 |
研究概要 |
Cortistatin Aの標的タンパク質を解明するために、申請者らが開発した活性アナログ化合物由来のビオチン標識アフィニティープローブ分子を合成し、これを用いて血管内皮細胞の破砕液からプルダウンアッセイを行い、選択的に結合してくるタンパク質の同定を目指した検討を行っており、活性アナログ化合物由来のプローブ分子 (Active probe)に選択的に結合し、HUVEC選択的な増殖阻害活性を示さないアナログ化合物由来のプローブ分子(Dummy probe)には結合しない数種のタンパク質をSDS-PAGE上で見いだせるようになった。現在、結合タンパク質のMSによる同定を進めているが、さらに明確な結果を得る目的で、緩和な条件で化学的に切断が可能な化学構造をリンカー部分へ組み込んだプローブ分子の合成も検討した結果、過ヨウ素酸処理で切断できる1,2-ジオールを導入したプローブ分子が有効に機能することを見いだし、さらに検討を進めている。 一方、リード化合物としての構造最適化を容易にするとともに、供給面の更なる改善を目的に、短工程かつ効率的な合成ルートの開発を目指した検討を行った結果、従来法と比較して工程数を半分に減らした第二世代合成法を開発した。ビタミンD2を出発物質にした新しい合成法も確立しており、さらに多様なアナログ化合物を合成していく体制が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
誘導化前のアナログ化合物と同等の活性を保持したアフィニティープローブ分子の合成に成功しており、これを用いたプルダウン実験も順調に進んでいる。選択的に結合してくるタンパク質も見いだしつつあり、同定のためのMS解析も開始している。また、アナログ化合物の合成法についても従来法から工程数を半減した改良合成法の確立に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
活性アナログ化合物由来のアフィニティープローブを用いた検討により絞り込みに成功した有望な候補タンパク質については、RNAi法によって該当する遺伝子のノックダウン細胞株を作製し、cortistatin A添加時と同様の表現形が現れるか否か、あるいは同タンパク質の高発現細胞株を作製して化合物に対する耐性を獲得するかを確認する等のケミカルジェネティクスの手法によって、真の標的分子であることを確認する。また、確立できた改良合成法を用いて、より有効性の高い化合物の創製を目指す。例えば、本化合物は脂溶性が高く、経口投与にはCMC-Naによる乳化分散が必要であるため、バイオアベイラビリティーの向上を意識して、極性官能基を有するA環部および側鎖部分の導入による水溶性の向上を検討する。結合タンパク質が同定されれば、その構造情報をもとに化合物とのドッキングスタディを行うことにより、化合物の構造最適化を効率的に進める。また、良好な活性を示す化合物については、腫瘍移植モデルマウスを用いたin vivo試験も行い、その実用性を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
アナログ化合物の合成について、従来法から工程数を半減した改良合成法を早い段階で確立することができたため、合成原料の使用量や各反応工程で必要となる試薬類の使用量を、当初の想定よりも減らすことができた。 次年度は標的同定を完了させるため、結合タンパク質を捕捉するためのアフィニティー樹脂や、探索源となる細胞が多数必要になる。また、アナログ化合物の合成についてもさらに改良を進めるための試薬が必要であるとともに、有望な化合物のin vivo活性評価を検討するための実験動物も必要となるので、それらの購入費用に充てる。
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