研究課題
若手研究(B)
弾性線維エラスチンは、肺や皮膚、血管、靭帯などの弾力性に寄与しているタンパク質である。一方、エラスチン架橋アミノ酸desmosine およびisodesmosineは、世界第4位の死亡原因であるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)のバイオマーカーとして期待されている。我々はdesmosineの最初の全合成を達成したものの、収率や段階数に課題を残していた。そこで本研究では、生合成を模倣したChichibabinピリジン合成反応によるdesmosineおよびisodesmosineの新規全合成法の開発を初年度に推進した。四置換ピリジンdesmosine類は、アルデヒドとリシンの縮合および環化反応によって生合成(Chichibabinピリジン合成)されていると考えられている。そこで、室温中、水中でランタノイドを触媒とした温和な条件下でのChichibabinピリジン合成を利用してdesmosine類の革新的な全合成法の開発を検討した。購入可能なリシン保護体およびグルタミン酸保護体からそれぞれ誘導できるアミンとアルデヒドを出発原料として、水中で50mol%のPr(OTf)3 存在下、反応を検討したところ、首尾よくdesmosineおよびisodesmosineの全合成を達成できた。出発物質からの最高収率としては、desmosineの場合、4段階8%、isodesmosineの場合は4段階35%となった。このように、非常に効率的な全合成を達成することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
生合成を模倣した全合成を達成できたことから、初年度の計画通りに進展しているため。
初年度に確立した合成法を適用して、同位体標識したdesmosineの合成に取り掛かる。例えば、原料に重水素を付与したアミノ酸を合成した後、上記で確立できた新規合成法を用いて、重水素標識したdesmosineまたはisodesmosineの合成を達成する。または、13C標識したアミノ酸を調製し、13C標識したdesmosineの合成を試みる。得られた試料のLC-MS/MS測定による定量分析に供する計画である。このようにして、患者由来試料の含有desmosine およびisodemosine の定量分析が可能となり、COPDバイオマーカー診断法の確立および新薬開発における治療薬効果の定量化に大きく貢献できる。
当初計画していた初年度の研究の推進において、次年度に購入可能な物品(HPLCカラムおよびその付属品)があると判断したため。初年度から繰り越した余剰額で、HPLCカラム他を購入する予定である。
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