研究実績の概要 |
単極紡錘体は、細胞分裂期に通常二極となる紡錘体が一つの極になる現象である。単極紡錘体を引き起こす化合物としては、微小管モータータンパク質であるEg5の阻害剤が知られている。申請者らは単極紡錘体を誘導する化合物としてピレノシンAを見出している。この化合物はEg5の酵素活性を阻害しないことから、新規な作用機構により単極紡錘体を引き起こすと考えられる。そこで本研究では、ピレノシンAの標的タンパク質の同定及び細胞内での作用機構解明を目的とした。 まずピレノシンAのプローブとして、アルキン誘導体及びビオチン誘導体を合成した。アルキン誘導体処理したHeLa細胞を抗αチューブリン抗体により免疫染色し、単極紡錘体を誘導することを確認した。次にピレノシンAアルキン誘導体を用いて細胞内の局在を解析した。アルキン誘導体でHeLa細胞を処理した後、フイスゲン反応により蛍光色素であるAlexaを導入し、細胞内の局在を解析した。その結果、ピレノシンAは中心体に作用していることが示唆された。 さらに、アルキン誘導体を用いて、ピレノシンA結合タンパク質の同定を行った。HeLa細胞をアルキン誘導体で処理し、その細胞破砕液中のピレノシンAのアルキン部位に、フイスゲン反応によりアジド基が結合したビオチンを導入した。ビオチン化タンパク質をNeutrAvidinビーズに用いて精製した。精製したタンパク質をSDS-PAGEにより分離後、Streptavidin-HRPによりビオチン化タンパク質を検出した。その結果、複数のタンパク質がアルキン誘導体と共有結合していることが示唆された。さらにLC-MS/MSにより、タンパク質を同定した結果、enolase 1, elongation factor 1-alpha 1, actinなどであることがわかった。
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