研究課題/領域番号 |
25750393
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
村田 亜沙子 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (50557121)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マイクロRNA / 小分子化合物 / 核酸 / 発現制御 / バイオテクノロジー |
研究概要 |
本研究の目的は,「Dicer によるpre-miRNA の切断効率を,小分子化合物で調節する」ことである。本研究では,RNA 中の特定の配列に結合する化合物を用いて,Dicer による切断に最適な2次構造をpre-miRNA に誘起する。これにより,pre-miRNA の切断効率を調節し,miRNA の生成量を化合物によってコントロールすることを目指す。この目的を達成するために,平成25年度は以下の2つの項目に分けて研究を進めることとした。 1. pre-miRNA 末端ループ変異体を作製,Dicer による切断反応の解析方法の確立: pre-miR-29aの末端ループの配列・大きさを変化させた変異体UGG5, UGG5-longをを作製し,in vitro のDicer 反応を行った。変異体UGG5, UGG5-longは,pre-miR-29aよりも長い末端ループを持ち(それぞれ27 nt, 35 nt),ループ中には当研究室で開発されたRNA結合性化合物である,(Z)-NCTSの結合モチーフ(UGG/UGG配列)を導入した。それぞれの変異体を基質として(Z)-NCTS存在下でDicerによる切断反応を行ったところ,変異体UGG5を用いた場合に,(Z)-NCTS存在下で切断パターンが変化することを確認した。一方,UGG5-longを用いた場合には,切断パターンおよびバンド強度に大きな変化は見られなかった。 2. (Z)-NCTS の存在下におけるDicer 反応の解析: 項目1と並行して行った。pre-miR-29aのDicerによる切断反応は,ポリアクリルアミドゲル電気泳動により行った。切断産物の配列等の詳細な解析にはノーザンブロット法が適していると考えられるが,多くの変異体を基質とした反応を解析するにあたっては,スループット性が低いと考えられたため,今回は行わなかった。(Z)-NCTSの他に,(Z)-NCTSの部分構造を有するNCDという化合物を用いて同様の実験を行ったところ,UGG5を基質として用いた場合には切断パターンの変化が見られるが,UGG5-longでは大きな変化が見られない,という(Z)-NCTSと同様の結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. pre-miRNA 末端ループ変異体を作製,Dicer による切断反応の解析方法の確立: おおむね順調に進展している。しかしながら,研究計画に若干の変更を加える必要があった。(Z)-NCTSを,次年度の計画として挙げているcell-basedセレクションに用いるにあたり,(Z)-NCTSの細胞毒性を調べた。その結果,EC 50が0.3 µM前後と低いことが分かり,(Z)-NCTSのUGG/UGGモチーフを含むRNAへのKd値が約0.5 µMであることを考慮すると,(Z)-NCTSを用いるのは最適でないと判断した。また,(Z)-NCTSを用いた場合と同様の結果が得られたNCDも,(Z)-NCTSと比較すると低いものの,細胞毒性が認められた。そこで,当研究室で新規に合成されたナフチリジン誘導体RNDについて,同様の実験を行うことを計画した。 2. (Z)-NCTS の存在下におけるDicer 反応の解析: おおむね順調に進展している。しかしながら,項目1にも記載した通り,(Z)-NCTSを本研究に用いるのは最適ではないと判断したため,新規ナフチリジン誘導体RNDで同様の実験を行うこととした。これまでに,RNDがどのような配列に結合するか不明であったため,in vitroセレクション法により結合配列を探索することとした。そこで,pre-miR-29aの末端ループの配列をランダム化したpre-miR-29a末端ループ変異体ライブラリーを作製し,in vitroセレクションを行った。セレクションは順調に進行し,RNDに親和性の高いいくつかの末端ループ変異体が得られたため,それらを基質としてRND存在下でDicerによる切断反応を行ったところ,ほぼ全ての変異体で,切断反応の阻害が確認された。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究計画に若干の変更が生じたため,平成26年度に行う予定であったcell-basedセレクションを,新規ナフチリジン誘導体RNDを標的としてin vitroセレクションで行った。セレクションにより得られた末端ループ変異体を基質としてDicerによる切断反応行ったところ,RND存在下で切断反応が阻害されることがわかり,RNDの末端ループへの結合が,DicerによるRNAの切断反応の効率に影響を与えることが示唆された。今後は,同様の現象が細胞内でも見られるかを検証し(平成26年度以降の計画,項目3に該当),cell-basedセレクションのシステムの構築を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めるにあたり必要に応じて研究費を執行したため,当初の見込額と執行額は異なったが,研究計画全体に大きな変更はない。しかし当該年度の研究計画に若干の変更があったため,当初予定していた研究項目を次年度に行うこととした。 当該年度に予定していた研究項目を次年度に行うとともに,研究計画の変更に伴い追加した実験計画の遂行に当該助成金の使用を計画している。
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