研究課題/領域番号 |
25750396
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
二村 友史 独立行政法人理化学研究所, 長田抗生物質研究室, 訪問研究員 (70525857)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ケミカルバイオロジー / モルフォベース / バイオプローブ / ポストゲノム創薬 |
研究概要 |
私はがん細胞が与えられた薬剤の作用に応じて特異な形態を示すことに着目し、ユニークな生理活性を示す化合物(バイオプローブ)を発掘する探索基盤として細胞形態変化データベース「モルフォベース」を用いたハイコンテントスクリーニング法を開発してきた。本研究では、天然化合物ライブラリーから見出した特異な表現型を示すオイデスマン化合物について、化合物固定化ビーズや薬剤プロテオームプロファイリングを用いてその標的タンパク質を同定し、がん分子標的薬開発における魅力的なドラッガブルターゲットの提示と医薬シードの導出を目的とした。 オイデスマン化合物NP803は、天然化合物ライブラリーより表現型スクリーニングで見出した化合物である。本化合物はtsNRK細胞の巨大化を誘導し、HeLa細胞に対して顕著なG2/M期停止を誘導する。平成25年度はこの化合物の細胞内標的分指標的候補を見出すことを目指し、①薬剤プロテオームプロファイリング、②化合物固定化ビーズによるアフィニティー精製を実施した。薬剤プロテオームプロファイリングでは、NP803はプロテアソーム阻害剤のクラスターに分類された。NP803がプロテアソームを阻害するかをin vitro、細胞レベルで検討したところ、阻害活性は見出されなかった。そこで、化合物固定化ビーズを用いたアフィニティー精製に着手した。まず固定化に必須なUV照射に対する安定性を確認したところ、この化合物はUVに不安定ではないことがわかった。次に作製した化合物固定化ビーズを用いて細胞抽出液より結合タンパク質を探索したが、現在までに、特異的な結合タンパク質の発見には至っていない。 次年度は、タンパク質調整法や結合条件を検討しつつ、別の標的タンパク質同定法の適応を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一年目の目標としてNP803の細胞内標的分子候補を見出すことを目指し、薬剤プロテオームプロファイリングや化合物固定化ビーズで標的タンパク質の探索を実施した。現在までに標的タンパク質を見出すことはできていないが、薬剤プロテオームプロファイリングで見出された候補分子に対するバリデーションは進んでおり、当該研究についてはおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
いち早くNP803の標的分子を見出すため、化合物固定化ビーズを用いたアフィニティー精製の条件検討(塩濃度やバッファーの種類、界面活性剤の有無)に注力する。この方法では、標的タンパク質を同定することが困難なことが考えられるので、Huangらが報告した標的タンパク質同定法DARTSの検討(プロテアーゼの種類や処理時間)を同時並行して行う。また、類縁化合物を用いたSAR研究を展開し、より強力なオイデスマン化合物の創製とそれを用いたケミカルバイオロジー研究を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画では、一年目にアフィニティー精製の条件検討やDARTSの検討を実施する予定であったが、薬剤プロテオームプロファイリングで候補分子が見出されたため、計画を前倒ししてバリデーションを実施した。そのため、DARTSやタンパク質機能解析に必要な分子生物学試薬用の研究費が未使用となり残額が生じた。 H26年度はヒト細胞培養器具(300~350千円)として培養シャーレやプラスチックピペット類を購入する。また細胞培養用の血清(250~300千円)は仔牛胎児血清を購入する。一般試薬類(1200千円)は標的タンパク質同定やタンパク質機能解析に必要な分子生物学試薬(抗体やassay kit、siRNAなど)の購入に充てる。
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