研究課題
本研究は、大脳眼球運動関連領野の神経活動抑制に伴う一側消去現象が、抑制領域がもつ多数の長距離神経投射のうちいずれの欠落に起因しているのか特定することを目的としている。前年度より、弓状溝前壁をGABAA作動薬微小注入により可逆的に不活性化した麻酔下マカクサルにおいて機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)実験を行い、大脳皮質の局所抑制が長距離神経投射を通じて全大脳脳領野間機能的結合に及ぼす影響を調べている。今年度は実験および解析を継続し、まず前年度に見出された現象、とくに局所不活性化による脳領野間機能的結合の変化と、微小注入領域と脳領野との間の平常時の機能的結合との関係の再現性を確認した。さらに、機能的結合性で定義される大脳領野間ネットワークの機能的モジュール構成が、局所的な皮質の抑制により大規模に変化していることが分かった。この結果は、大脳皮質領野の局所活動変化が脳領野間ネットワークに大域的な因果的影響を引き起こしていることを示している。
2: おおむね順調に進展している
大脳皮質の局所的不活性化によって引き起こされる全脳領野間機能的ネットワークの変化について、前年度までに得られた結果を発展させた知見を得ることができた。fMRIで計測された機能的結合ネットワークから定義される大脳皮質のモジュール構造は、個体行動に含まれる認知的要素と対応していることが以前より指摘されている。本年度に局所神経活動変化とモジュール構造の変化の因果的関係について知見が得られたことは、本研究の目的である行動変化に因果的にかかわる神経経路を探索するうえで本質的であり、研究は順調に進行している。
弓状溝前壁のGABA作動薬による局所不活化に伴う全脳の領野間機能的ネットワーク変化について、対外発表としてまとめる。本研究のこれまでの研究結果により、局所的な神経活動の変化によって大脳領野間ネットワークが全脳領域にわたって影響を受けることが分かったが、その中で行動変化に因果的に影響を与えているネットワークレベルの現象を探索していきたい。今後さらに、脳の広い範囲にわたって時間的に詳細なダイナミクスを明らかにすることが可能な皮質脳波(ECoG)も導入して、薬理学的神経活動操作・電気刺激・光遺伝学的手法といった方法論の併用実験を通じて大脳ネットワーク変化が個体行動へとつながる因果関係の解明を目指す。
動物(ニホンザル)の購入を次年度以降に行うこととした。機材・試薬については所属研究室で購入していたものを使用するなど研究を効率的に推進した。また次年度以降に予定される外部発表の機会に必要な費用を配分することとした。
実験に使用する動物(ニホンザル)を、次年度以降に購入する計画にしている。また、次年度以降の請求額と合わせ、実験に必要な機材・試薬・飼料の購入費用と、平成二十六年度までに得た結果の外部発表に伴う費用として使用する予定である。
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Neuron
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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