研究課題/領域番号 |
25750400
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
正本 和人 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (60455384)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 神経血管連関 / 光イメージング / 脳微小循環 / 血流計測 / 神経活動 / 糖代謝 |
研究概要 |
本年度は、成長期のマウス大脳において、神経賦活に伴う血管拡張反応である、神経血管連関の獲得時期を明らかにすることを主目的に研究を行った。まず、神経血管連関を評価するための定量的指標として、これまでに蛍光標識グルコースを用いた神経代謝の評価と脳表血管における血流速度の画像化について解析手法の検討を行い、それぞれ日本機械学会バイオエンジニアリング部門講演会や国際学会ISOTTで、その成果について発表を行った。 一方、神経賦活を伴わない血管反応の誘発手法として、あらたに光遺伝学による光誘発性の脳血流上昇モデルについて検討し、その成果については日本脳循環代謝学会で論文発表を行った。現在サポートデータを取得しつつ、論文執筆を進めている。 また、血管反応の指標の一つとして、成体マウス大脳において血管の新生を捉えることに成功した。本成果は、脳循環代謝分野での国際誌であるjourna of cerebral blood flow and metabolismに掲載された。また、このときの血管変化を画像データに基いて定量化するためのソフトウエアを構築し、国際誌AdvExpMedBiolに発表した。これらの定量イメージング・画像解析技術については、引き続き精度を高めるために次年度も検討を重ねる。 一方、本年度に予定していた幼児期のマウスを用いた実験は計画より遅れている。その主たる理由は、マウスのウイルス感染事故のため、全処分と実験室のクリーンアップにより、3ヶ月実験が停止している。本研究では、さまざまな蛍光タンパクを発現させた遺伝子組み換えマウスを用いているため、実験再開に向けた繁殖・交配を急ぎ進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経・グリア・血管連関を評価するための技術開発は順調に進んでおり、得られた成果は順次論文化されている。 神経活動の定量化には、細胞内カルシウムに関するセンサータンパクであるGCaMP3マウスを導入し、繁殖を進めている。感染事故で繁殖計画にも遅れが生じたが、今夏以降に実験の再開が見込まれる。 また、血管反応の可視化には、血管内皮細胞に緑色蛍光タンパク(GFP)を遺伝子組み換え技術で発現させたTie2-GFPマウスを使用しており、血管新生および血管拡張に関するイメージングプロトコルと画像解析法を確立した。さらに毛細血管を含めた血管ネットワーク全体を評価するためのソフトウエアの開発が必要である。 そして、血管内を流れる血流、および血管から神経に輸送される糖の輸送動態に関しても、画像解析による評価手法の実証を終えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.幼児期のマウスを導入し、これまでに確立した手法によって神経・グリア・血管の機能を評価する。 2.対象群を評価し上で、血流反応を阻害した条件化で同様の実験を繰り返し、血流反応の神経科学的意義について明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
技術開発に関する研究計画が順調に進み、予定よりも早い段階で国際学会及び国内学会での論文発表に結びつく成果が得られた。そこで、これらの旅費を支出するために、次年度より800千円前倒し請求を行った。しかし、その後、国外への出張に関して学内での競争的研究資金の獲得が成功したため、584,515円の繰越が生じた。 糖の輸送解析及び血流速度の画像化に関する研究テーマでは、長期継続観察が可能か、引き続き実験データの蓄積が必要である。このデータ収集のために1人平均週に1度の実験で8ヶ月間の実験補助を想定する。次に、血管反応性を阻害した状況下で、マウスの行動実験および神経活動の評価を行う。 血管反応の抑制に関しては、当初薬理的手法を想定していたがより精度高く狙った細胞を 特異的に阻害するために、本年度は光遺伝学の手法についても検討する。これまでにまとまったデータに関しては、随時並行して論文化を進める。ほか、英文校正料、投稿費用、及び別刷印刷代で年間5本の論文投稿にかかる費用を計上する。
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