研究課題/領域番号 |
25750405
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
藤澤 隆史 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 特命助教 (90434894)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 思春期 / 社会的ストレス / 衝動性 / 脳イメージング / 性腺ホルモン |
研究概要 |
本研究では、思春期では性腺ホルモンによって『脳機能のアンバランス』が生じ、衝動性亢進と社会的ストレス耐性低下がもたらされ、何らかの要因(遺伝子、環境)が加わると逸脱行動が生じるという仮説の下、その仮説を検証すべく、思春期の社会行動とその逸脱行動に関して、「衝動性」と「社会的ストレス耐性」の2軸の行動特性を元に、脳機能のアンバランスと内分泌指標との連関、思春期社会行動の逸脱をもたらす脳機能特性に関与する内分泌機能を明らかにすることを目的としている。 本年度は、青年期児童935名を対象に社会的ストレスおよび衝動性に関わる調査を行い、ストレスモデルの妥当性と有効性を検証し、その後、児童28名、思春期児童16名、成人37名を対象に脳イメージングおよびホルモン測定を行った。思春期群では、サブクリニカル群児童8名(13.8±2.0歳)と対照となる定型発達児8名(12.9±1.7歳)に、「衝動性」に関与する報酬課題を行い、fMRIで神経賦活度を測定した。その結果、①サブクリニカル群では定型発達群と比べて、金銭報酬の高低にかかわらず、金銭報酬獲得時の右側線条体(被殻・尾状核)の賦活度が低下していた (p < 0.05)。すなわちサブクリニカル群の報酬への感受性低下が示唆され、線条体経路のドパミン機能不全の関連が示唆された。また、脳活動とSDQ全体スコアに負の相関がみられ、情緒・行動の困難さが強いほど脳賦活値が低かった(r = -0.53, p = 0.03)。 また成人35名を対象に脳イメージングとホルモン測定を行った。脳イメージングでは、rs-fMRIを実施し社会的ストレスに関わるターゲット領域をseedとし、安静時脳活動と社会的ストレス耐性の神経基盤について検討した。その結果、左中側頭回、左右中後頭回に関連部位が見出され、ストレス耐性が高いほど上記部位の活性度が高いことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属先変更のため。当初の予定を多少変更し、青年期を対象にモデル検証のための大規模調査を実施できたことは大きかったが、健常群を対象とした脳イメージング研究は、予定の人数の半分程度に留まっている。またホルモン測定に関しても、サンプルを収集するに留まっており、濃度測定ができていない。しかしながら、次年度に予定していたサブクリニカル群を対象とした調査を開始することができ、現時点で健常群との脳賦活の違いを確認できている点は、一定の成果として評価できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、進捗が遅れている定型発達群(児童期・思春期・成人期)の目標サンプル数の追加である。現時点では実験系の確立とおよそ半数ほどは実験実施が達成できているため、次年度前半で実験実施を終了し、後半ではホルモン測定を行うことで、性腺関連ホルモン濃度に関連する行動指標パターンと脳機能パターンを特定する必要がある。 また成果発表に関しては、青年期児童を対象に行った大規模調査については、青年期における社会的ストレスモデルについて一定の成果を得ることができたので、論文として公表することを目的とする。また、報酬課題を用いたサブクリニカル群を対象とした脳賦活についても次年度前半でサンプル数を追加後、現時点で得られている傾向に変化がなければ、本邦初の成果であると考えられるため論文化を行う。またrs-fMRIによる社会的ストレスに関与する安静時脳活動に関する成果も前例がないと考えられるため、論文化を視野に、次年度前半で目標サンプル数を追加する。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終年度において、今後の推進方策を遂行する必要があるため。 1. 進捗が遅れている定型発達群(児童期・思春期・成人期)の目標サンプル数の追加のために謝金など必要であるため、次年度前半で残り半数のサンプル数を収集して実験実施を終了する。 2. ホルモン濃度測定の進捗が遅れているため、濃度測定を行い、必要に応じてキットを追加してターゲットとしている神経基盤に関与する性腺関連ホルモンを探索的に調査する。 3. 最終的に得られた成果について、日本児童青年精神医学会(浜松)、日本心理学会(京都)、米国児童精神医学会議(サンディエゴ)にて参加発表し、意見交換と情報収集を行う。
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