研究課題
前頭前野の発達は、皮質下構造の発達に比較して遅く、その発達は30代にまで及ぶという報告がされており、この発達差は思春期で最大となることから、これと思春期特有の行動特徴や問題行動との関連性が示唆されている。思春期は性腺ホルモンの分泌量が急激に増加する時期であり、この増加が思春期行動に影響を及ぼしている可能性が示唆されている。本研究では、思春期と成人期の比較により、性腺ホルモン濃度が前頭前野機能に及ぼす影響について検討し、また、その影響の及ぼし方(活性化効果、組織化効果)についても検討した。全ての行動指標について、テストステロンとの関連性について検討した結果、主な結果としては、Stop-Signal課題による衝動的反応との間に関連性が見られた。衝動的反応の性差は発達に関わらず確認されたが、中学生では統計的な有意差が検出されたが、大学生では検出されなかった。次に、衝動的反応とテストステロンの関連性について検討したところ、男性において発達段階に関わらず正の関連性が確認され、さらにその関連性は、大学生に比べて思春期である中学生において強いものであった。これは仮説を支持するものであり、衝動的反応における組織化効果の可能性が示唆される。またサブクリニカル群における衝動性の評価として、親による不適切な養育を経験した児童16名、定型発達児童20名を対象に、近世報酬課題における脳機能イメージングを行い脳内報酬系の神経賦活度を測定した。また、情緒・行動の重症度質問紙との関連を調べた。その結果、サブクリニカル群では、定型発達群と比べて、金銭報酬獲得時において右側腹側線条体の賦活度が低下が認められ、さらにその賦活は情緒行動困難の重症度と負の相関を示した。結果より、不適切な養育経験は子の報酬感受性に対する機能不全をもたらしている可能性が示唆された。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件)
Plos One
巻: in press ページ: in press
Frontiers in Neuroscience
巻: 8 ページ: 295
doi: 10.3389/fnins.2014.00295