研究課題/領域番号 |
25750409
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
寒 重之 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座助教 (20531867)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | EEG/fMRI同時計測 / 超高磁場MRI |
研究概要 |
本研究では、fMRIを用いて脳幹部に存在する神経核の活動を同定・検出する技術の確立を目指して、岩手医科大学 医歯薬総合研究所 超高磁場MRI診断・病態研究部門が所有する7T MRIにおいてEEG/fMRI同時計測を実現するために、以下の4つの点についての検討をおこない、7T MRIでも1.5Tあるいは3T MRIと同じようにEEG/fMRI同時計測をおこなえることが確認できた。 1) 被験者に対する安全性の検討――MRIの撮像ではRFパルスの照射および勾配磁場を急激に変化させるため、誘導起電力により脳波電極が発熱し被験者が熱傷を負う危険性がある。MRI対応の脳波計測装置を用いることでこのような危険性を最小限に抑えることができるが、実際の実験環境において電極の発熱が生じないかを確認した。EPI、SWI両シーケンスとも20分間の測定をおこなっても明らかな温度上昇はなかった。 2) 脳波計測装置に対するMRI撮像の影響の検討――MRI撮像に伴うRFパルスの照射と勾配磁場の急激な変化は、電極の発熱を生じさせるだけでなく、脳波計測装置自体を発熱させ、装置にダメージを与える可能性がある。そのような事故の可能性を評価するため、電極と同様に、EPIおよびSWIの両シーケンスで脳波計測装置の温度変化を評価した。その結果、電極と同様に脳波計測装置にも明らかな温度の上昇は起こらなかった。 3) 脳波に混入するMRI由来ノイズの検討――脳波にはMRIに由来するノイズとして撮像に伴うノイズとHeポンプの動作に由来するノイズがある。撮像に伴うノイズは、従来のオフラインでのノイズ除去法によってヒト背景脳波を確認できる程度に取り除くことが可能であった。一方Heポンプに由来するノイズについては、ポンプの動作時と停止時の脳波を比べることで、その影響はごくわずかであり、ヒト背景脳波の判定には問題がないことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
覚醒状態の変化に伴う脳幹部の神経活動を同定するためには、高い空間分解能でfMRIの撮像がおこなえる7T MRIにおいて被験者の覚醒水準を評価するために脳波を計測できなくてはならない。これまでEEG/fMRI同時計測がおこなわれてきた3T MRIと比べ7T MRIでは静磁場強度が2倍以上強くなり、それに伴い同時計測において解消困難な問題が生じる可能性が懸念された。しかし、本年度の研究において、7T MRIにおいても3T MRIまでと同様に、装置に特別な改良を加えなくてもEEGの計測がおこなえること、また計測されたEEGデータはこれまでの3T MRIでの同時計測で得られたデータとほぼ遜色がないことが確認できた。このことは、本研究の目的を達成するためには重要な成果である。 さらに、7T MRIにおけるEEG/fMRI同時計測において、被験者の安全性が確認できたことも重要な成果である。これによって、さまざまな疾患を持つ患者に対して、7T MRIにおいてEEG/fMRI同時計測を安全におこなえることを示すことができた。同時計測によって何が明らかにできるかというのは、次年度以降の課題ではあるが、本年度で得られた7T MRIにおいて安全にEEG/fMRI同時計測がおこなえるとの結果は、7T MRIの臨床応用可能性を広げるものであり、非常に価値が高い。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の活動により、7T MRIにおいてEEG/fMRI同時計測を実施できる目処をつけることができた。来年度は、7T MRIを用いた高空間分解能fMRIによって実際に脳幹部の活動を同定できるのかについて、以下のような検討をおこなう予定である。 これまでの動物あるいはヒトを対象とした研究により、侵害刺激と中脳水道灰白質、また眼球運動と動眼神経核/外転神経核など、いくつかの神経核と刺激あるいは行動との対応が明らかにされている。これらの知見を踏まえて、侵害刺激や情動刺激といった外部刺激、また眼球運動課題を用いて、中脳水道灰白質、青斑核、動眼/外転神経核の活動を同定するための最適なfMRIの撮像条件を検討する。特に脳幹部の神経核は領域のサイズが小さいため、voxel sizeは重要なパラメタになると考えられるので、最適なvoxel sizeの検討を優先しておこなう。 また、複数の被験者を対象として安静時fMRIの撮像をおこない、脳波上で定義される覚醒状態の変化と対応して活動する脳幹部の神経核の同定が同定できるか検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は以下の2つである。 1) 本年度の実験が既に所有していた実験機器によるものでおこなわれ、予定していた新規の物品の購入を見送ったため 2) 7T MRIでのEEG/fMRI同時計測が実現可能かの検証が主にphantomを使用しておこなわれ外部被験者を対象とした実験は行わなかったため 本年度におこなった同時計測の実現可能性の検証実験によって、脳波電極などで特殊な機器・装置を用いる必要があることが分かったので、次年度使用額についてはそれらの購入に充てる。また、次年度においてはphantomではなく実際に外部被験者を募集しヒトでEEG/fMRI同時計測をおこなう予定であり、その被験者謝金に充てる予定である。さらに、次年度においても岩手医大での実験をおこなうために本年度と同額又はそれ以上の旅費が発生する予定であるので、それに充てる予定である。
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