平成26年度は、昨年度までに構築したfMRIと脳波の同時計測システムを用いて、被験者を対象に安静時fMRIおよび賦活fMRIを実施し、fMRIによって脳幹部の活動が同定できるかの具体的な検討をおこなった。 同時計測をおこなった脳波に関しては、測定ごとにノイズレベルにばらつきが見られたが、開閉眼に伴うα波の出現・消失や覚醒状態を反映したαパワの増減を全被験者で確認することができた。また、聴覚刺激を用いた賦活型fMRIでは、刺激に対する驚愕反応の指標として皮膚コンダクタンス反応を計測し、その出現を確認することができた。しかし、αパワの増減や聴覚刺激の提示に対してfMRI信号が変化する領域を脳幹部で同定することはできなかった。また、αパワとの対応については、多くの先行研究で報告されている視床での活動の正の相関と、視覚野での活動の負の相関も再現することができなかった。 一方、皮質の反応性については、従来の1/3の1mm程度のボクセルサイズであっても、眼球運動課題で前頭眼野と頭頂眼野が、聴覚刺激で一次聴覚野が、また表情認知課題では視覚野や紡錘状回顔領域、扁桃体などの活動を確認することができた。このことは、刺激や課題遂行に対する皮質および皮質下領域の活動については、7T MRIを用いることによって非常に高い空間分解能で活動部位を評価できる可能性を示すものである。 今回の研究課題では、7T MRIの高空間分解能を生かして、これまで検討することが難しかった脳幹部の活動の同定に取り組んだ。脳幹部の特定の神経核の活動を同定できるまでには至らなかったが、本研究によって7T MRIにおいても3T MRIと遜色ないレベルで脳波とfMRIの同時計測ができることを明らかにした。今後は、脳幹部の活動を同定できなかった理由を詳細に検討し、fMRIを用いて脳幹部の特定の神経核を同定できる技術の開発に取り組む。
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