研究課題/領域番号 |
25750410
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
塩崎 博史 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 基礎科学特別研究員 (50630571)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 視覚 / 短期記憶 / 意思決定 / 行動選択 / ショウジョウバエ / 飛行 |
研究概要 |
昆虫を含む多くの動物は、いま現在受け取っている感覚入力に加え、数秒前に受けた感覚入力を利用することで、適切な行動を選択する。本研究では、比較的単純な脳構造を持つショウジョウバエを用いることで、この種の短期記憶を担う神経回路機構の解明を目指す。 本年度は、行動課題を行うハエから単一神経細胞の活動を記録できる実験系の作成およびハエに行わせる記憶課題の開発を行った。翅が自由に動く状態を保ったまま、ハエの体の一部を顕微鏡下に固定した。ハエのまわりを取り囲むように発光ダイオードを配置し、視野の広範囲に視覚刺激を呈示できるようにした。羽ばたきから飛行方向を推定し、視覚フィードバックを与えることで、ハエに仮想的な空間を飛行させた。ハエ固定具の形状を工夫することで、仮想飛行中のハエから、電気生理学的手法およびカルシウムイメージング法を用いて、神経活動を計測できるようにした。 作成した仮想飛行システムを用いて、数秒前の視覚経験が飛行方向の選択に与える影響を検討した。ハエは、低コントラストの縦長の視覚物体(棒状刺激)に向かって飛ぶ習性をもつ。そこで、2つの棒状刺激を左右の視野に同時に呈示したところ、ハエはどちらかの棒状刺激に向かって飛行した。この飛行方向選択が、過去の視覚経験にどのように依存するかを検討した。その結果、ハエは過去に視覚物体が呈示されていた場所を避け、新規な位置に現れた物体に向かって飛行する性質を持つことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、飛行中のハエから単一神経細胞の活動を計測する実験系の構築およびハエに行わせる記憶課題の開発を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、ショウジョウバエにおける短期記憶の神経表現およびそのメカニズムの検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度に新たな視覚刺激呈示用の装置を購入する予定であったが、装置の開発が間に合わず、購入することができなかった。 これまでの実験により、仮想飛行実験を成功させるためには、ハエの行動に応じて視覚刺激を素早く切り替える必要があることがわかった。そこで、より高速に視覚刺激を切り替えることができる、新型の昆虫用視覚刺激呈示装置を購入する予定である。また、神経活動記録実験に必要な消耗品の購入、成果発表のための旅費の支出を予定している。
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