研究課題/領域番号 |
25760001
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 圭史 北海道大学, スラブ研究センター, 共同研究員 (20609599)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 民族問題 / 旧ソ連 / クリミア問題 / ウクライナ / モルドヴァ / 資源動員論 / 民族紛争 / グルジア |
研究概要 |
本研究は、旧ソ連諸国における民族紛争・民族間対立の端緒である、ソ連邦構成共和国からの独立を試みた「分離主義」運動を研究対象とし、資源動員論をベースとした論理式を用いてその要因の分析を試みるものである。 本年度は、上記の研究目的を達成するためウクライナ、ポーランド、ロシアにて二回(9月及び12月)、日本にて一回(10月)の研究調査を実施した。いずれの研究調査も主要目的は資料収集であった。ウクライナでは、ウクライナ国会図書館、ウクライナ国立文書館へ、ポーランドではワルシャワ大学付属図書館、日本では北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターにてそれぞれ調査を実施した。収集した資料は、ソ連時代末期のウクライナ共和国及びクリミア自治州の地方新聞及び一次・二次資料に関するものであった。資料の収集後は夏季から冬季にかけて読解を行った。資料読解の研究成果として、2013年11月に、「ソ連邦末期におけるクリミア・ソヴィエト社会主義自治共和国の『再建』:積極的建国か,消極的建国か?」と題してウクライナ研究会第30会研究報告会にて口頭発表を行った。発表内容は、クリミア問題の「序説」的な位置付けであるため、本格的な発表は今後行なう必要がある。論文発表に関しては、書籍(The Image of the Region in Eurasian Studies)の中に、自身の論文(“Europeanization at the ‘grassroots’ level in Moldova: What are effective ways to deal with the Transnistrian conflict?”)が掲載された。同論文は、本研究と密接に関係するテーマである、モルドヴァの沿ドニエストル紛争の解決法に言及したものであった。以上、3回の研究調査、1回の研究発表、1本の論文発表を今年度実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、自身の研究環境及び予想外の世界情勢の変化の中で研究活動を継続せざるをえなかった。特に昨今のウクライナ情勢により、クリミア問題を対象とした研究の自由な調査活動及び研究発表が関係諸国(特にロシア)にて制限されたことは、自身の研究を発展・進展させる上で大きな障害になったと言える。しかし、そのような困難な環境の中であっても、ウクライナ、ポーランド、ロシア等の東欧諸国にて、二度の調査活動を実施できた価値は高い。調査活動の中で、現地文書館・図書館にて有用な資料の収集を行うことに成功した。研究発表及び論文発表に関しては、研究発表を日本で一度、論文発表は一本と、自身の例年の研究活動と比較して総体的に少なかったことは否めない。研究発表及び論文発表のタイミングが自分の希望した時期と合致しなかったことも原因であるが、自分自身、概して発表にトライする回数が少なかったことが主要因であると考えている。この点を反省しつつ、最終年度である来年度は、さらなる研究発表及び論文発表を行う必要があると認識している。ちなみに、来年度は、4月にロシアにて、5月に米国にて国際会議での発表が既に決定しており、研究成果の増加という点では良い兆候を見せつつある。また、昨今のウクライナ情勢に伴い、自身の研究価値がより高まりつつある傾向があるため、国内外を問わず、研究発表及び論文発表の機会を増加させ、本年度の研究の遅れを取り戻すべきであろう。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は研究発表回数及び論文発表数の増加が必須課題となる。また、当初予定していたグルジア調査出張が実現できなかった故に来年度に実施しなくてはならない。クリミアへの研究調査は来年度を予定していたが、昨今のウクライナ情勢によりその実現は極めて困難であろう。このため、クリミアへ渡航せずに研究活動を継続する研究方法を考案(キエフで可能な限り用務を済ませる等)しなくてはならない。目標としては、夏にグルジア共和国に1回、秋にウクライナ共和国に1回の研究調査、米国で1回(ハーヴァード大学デイヴィスセンター)、フランスで1回(BRIT2014)、ロシアで3回(サハリン国立大学)、国際会議での研究発表を実施したい。ちなみに、ロシアでの研究発表のうち2回、及び米国での研究発表1回は既に発表日時が決定している。研究発表の場に多く立つことによって、自身の研究および存在をアピールする機会が増えるものと期待している。
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