研究課題
平成26年度は、ヒマラヤ高地のインド・ラダーク地方において実施した住民の健康・栄養状態に関する医学・栄養学健診データの解析を主に行った。ラダーク地域の高所住民における、加齢にともなう栄養摂取量の変化と糖尿病との関連を分析した結果、一般的に生活習慣病の原因とされている「過食」のみならず、エネルギー摂取量の少ない住民にも糖尿病の頻度が多く見られることを発見した。エネルギー摂取量の少ない集団では、摂取する食品の多様性に乏しく、炭水化物に偏った摂取であることが判明した。またラダーク地域の都市部:レーと、高原部:チャンタン高原の住民で栄養摂取量と糖尿病の発生の特徴に違いがあることがわかり、この分析結果を第56回日本老年医学会にて発表している。ヒマラヤ高地のラダークにおいて、栄養摂取・食多様性と生活習慣病との関連について、都市部・高原部それぞれの特徴を比較したが、同様に厳しい高所環境に暮らすアンデスの住民のケースではどうであろうか。ペルー・コタワシ地区において過去に行った医学・栄養学調査から得られたデータを解析し、ヒマラヤ高地の住民の特徴と比較を行った。その結果、アンデス高地では食の多様性と身体健康度、心理的健康度が関連しておらず、さらにケチュア系原住民とメスチソとの間に食生活や生活習慣病の実態の違いが見られることが分かり、これらを第34回日本登山医学会学術集会にて報告した。さらに、高地住民の特徴を把握するために、本邦の山間部農村(高知県土佐町)においても平成26年8月に調査を行った。食の多様性を低下させる一因と考えられる咀嚼能力にも着目し、歯科的健診も同時に行った。食と生活習慣病において、多様な健診項目からの知見や、フィールドワークによる観察調査を進めている。
2: おおむね順調に進展している
ヒマラヤ地域においてこれまでに実施した医学・栄養学健診のデータ解析も順調に進み、学会発表や論文執筆に取り組んでいる。
平成27年度は、本研究の中心となるヒマラヤ高地のラダーク地方における住民の生活習慣病・食の関連の特徴をより追及するための現地調査を行う。ラダーク地方の住民の状況との比較のために、インド・アルナーチャル州のモンパ族(同様のチベット系民族)居住地域においても現地調査を行う。これによって、ヒマラヤ山脈の東と西での異なる生態環境における食と生活習慣病との関連の特徴を明らかにする。
予定していたインド・アルナーチャル州での現地調査が、現地の入域許可の申請等の影響で実施できなかったため。
平成27年度は、ヒマラヤ高地の東部(インド・アルナーチャル州またはブータンのモンパ族居住地域)において現地調査を実施する。
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Community Dental Health (2015) 32, 1–7
巻: 32 ページ: 1-7