研究課題
本研究の目的は、第1に、湾岸アラブ諸国への国際労働力移動や外国人ムスリムとの婚姻によってイスラームに改宗したフィリピン人女性たちの、フィリピン社会における複合的力関係及び構造的布置を明らかにすることであり、第2に、当該女性自身の関係構築についての認識を探ることであった。調査では、夏期にはフィリピン・マニラにある2つのムスリム・コミュニティを訪れ、7名のイスラーム改宗女性とグループディスカッションを実施し、4名の各分野の専門家に聞き取りを行った。それによって明らかになった主要な点は次の2つである。第1に、女性の改宗時期により、イスラーム実践および他者関係について異なる傾向があることがわかった。1990年代以前は、ミンダナオ紛争によりフィリピン国内のキリスト教徒社会でムスリムに対し嫌悪感を強く持つ者が多かったことと、中東湾岸地域への女性出稼ぎ労働者が少なかったことから、改宗者とは主にムスリム男性の妻というポジションを得て、フィリピン・ムスリム社会に溶け込もうとする動きが主だった。そのため、民族衣装を着用しつつも、そのイスラーム実践は夫や夫の親族の教えによって習得したものであった。一方、1990年代以後については、女性の出稼ぎ労働者の低年齢化と、中東湾岸諸国でのイスラームとの接触の増加によって、自ら改宗し、さらに中東湾岸諸国のムスリム文化を服装や思考、実践に持ち込んだ。これに付随して、第2に、フィリピン・ムスリムの民族女性たちは、中東から持ち込み、より「真面目」にイスラームを実践する女性たちを、ホームランドのミンダナオでは忌避しつつも、マニラのような都市では、新鮮なものとして捉えるようになってきていることがわかった。
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Muslims Minorities inEastAsian Politics and Society (Special Issue)
巻: 未定 ページ: 未定
Southeast Asian Migration: People on the Move In Search of Work, Refuge and Belonging
巻: n/a ページ: 92-113