研究課題/領域番号 |
25760009
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
金城 美幸 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (80632215)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | パレスチナ / イスラエル / 歴史記述 / オーラルヒストリー / 難民 |
研究概要 |
初年度にあたる今年は、パレスチナ人のオーラルヒストリーの分析にあたって踏まえておくべき文脈についての研究を主眼とした。パレスチナ/イスラエル地域における歴史をめぐる言論闘争において、公文書中心の方法論を絶対視するイスラエル人の歴史記述の前に、パレスチナ人のオーラルヒストリーは周縁的な地位に置かれている。しかし、パレスチナ人による史料保存・活用の困難とは、イスラエル建国およびその後の支配拡大とともにもたらされた離散・占領の状況に起因するものである。よって、パレスチナ人の歴史言説は、このような経緯のもとでオーラルヒストリーが必要とされる状況にある点を理解する必要がある。これらの経緯については国内外の学会にて口頭発表をおこなっている。 同時に、パレスチナ人のオーラルヒストリーの内実についても取り組んでいる。対象は、ヨルダン川西岸地区のビルゼイト大学から出版されてきたオーラルヒストリーのシリーズ『破壊されたパレスチナ人村落』である。今年度は、複数のパレスチナ人歴史家が用いてきた方法論の差異に注目し、パレスチナ人のオーラルヒストリーが目指す方向性の見極めを行った。この作業からは、以下の点が明らかとなった。すなわち、イスラエルとの間の闘争などのような政治・軍事史には還元されない、パレスチナ社会の多様な人的経験の掘り起しを目指す歴史記述が存在する一方で、イスラエルの政治・軍事史との論争に決着をつけることを目指すナショナルな歴史記述が存在するのである。これら二つの方向性は、同オーラルヒストリー・シリーズには併存していたが、これらの研究が、以降にパレスチナ人の間で量産されていったオーラルヒストリーをどのように方向づけたかを検討する上では重要な論点となりうると考える。現在、これらの研究から得られた成果を研究ノートとしてまとめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文として発表する段階には至らなかったが、その前段階としての研究ノートを作成している。この作業に関しては、現地でのフィールドワークを行ったことで、現地の研究者たちとの情報交換を行うことができ、より現地のコンテキストに即したテキスト内容の分析を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、パレスチナ人のオーラルヒストリーの方法論よりも、内容そのものの分析を進め、従来の文書中心的な方法論に拠ってきた歴史記述からは黙殺されてきた過去がどのように掘り起こされているのかについての検討を進め、パレスチナ人のオーラルヒストリーの可能性をより深く検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年8月初旬から2014年3月31日に渡って行った海外出張の経費を、4月以降の支払としたため、結果的に2013年度としては未使用額が生じた。 2013年8月初旬から2014年3月31日に渡って行った海外出張の経費として使用する。また、平成26年度予算は、2014年8月から2015年3月に行う海外出張の経費として使用する。
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