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2014 年度 実績報告書

パレスチナ人のナクバの歴史記述研究――オーラルヒストリーの可能性

研究課題

研究課題/領域番号 25760009
研究機関立命館大学

研究代表者

金城 美幸  立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (80632215)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードパレスチナ / イスラエル / ナクバ / 難民 / 歴史記述 / オーラルヒストリー / 証言
研究実績の概要

科研費の最終年度における本年度は、2年間の研究のとりまとめとして、パレスチナ人の歴史家たちのナクバについての歴史記述の方法論の整理を行い、その成果を研究ノートとして日本中東学会年鑑第30巻1号(2014年7月発刊)「破壊されたパレスチナ人村落史の構築――対抗言説としてのオーラルヒストリー」として発表した。
本研究では、当初の予定通り、ヨルダン川西岸地区のビルゼイト大学から発刊されたパレスチナ人の村落地誌シリーズ『破壊されたパレスチナの村々』を研究対象として、その方法論の変遷を2期に分けて考察した。そこでは以下のような知見が得られた。これらの2つの時期においては、難民の証言に基づく村落史の構築が目指されていた点では共通しているが、第1期はイスラエル人との歴史認識論争にはとらわれない形で村落の多様性を掘り起こす方向が目指されており、パレスチナ社会像をより豊かにしようとする意図が存在していた。そこでは難民の証言は手段であり目的となっていた。対して第2期では、イスラエル人との歴史認識論争において争点となっていた問題について証言に基づいて回答を示すことを目的とし、結果、村民の追放という主題をより包括的かつ詳細に述べるテキストとなり、ナショナルな言説の確立を目指すものになった。
現実政治に照らせば、上記二つの方法論のうちより説得力をもつのは後者ということになる。現実政治では、政治課題に直接回答し、何らかの代表性が保証された語りの形式が求められるためである。この観点からはナショナルな歴史記述がもつ役割は大きい。しかし第1期地誌が明かす村落史の人間的側面は、近代化・資本主義化・都市化の流れと国際社会の政治決定から忘れ去られかねない村落の姿を映す貴重な史料である。それはパレスチナ社会を翻弄し続ける現実政治に対する、確かな抵抗の言説なのである。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 反二国家解決としてのオスロ・プロセスと新たな和平言説の誕生(研究ノート)2015

    • 著者名/発表者名
      金城美幸
    • 雑誌名

      『オスロ合意から20年――パレスチナ/イスラエルの変容と課題』

      巻: 1巻 ページ: 21-35

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 破壊されたパレスチナ人村落史の構築――対抗言説としてのオーラルヒストリー(研究ノート)2014

    • 著者名/発表者名
      金城美幸
    • 雑誌名

      日本中東学会年報

      巻: 30巻1号 ページ: 129-146

    • 査読あり
  • [学会発表] ポスト・オスロ体制へ?――パレスチナ独立国家承認への歩みとその弊害2015

    • 著者名/発表者名
      金城美幸
    • 学会等名
      立命館大学国際地域研究所途上国研究会
    • 発表場所
      立命館大学(京都府京都市)
    • 年月日
      2015-03-25
  • [学会発表] From Conflict Resolution to Conflict Management: The Transformation of Israeli Labor Party during the Peace Process.2014

    • 著者名/発表者名
      Miyuki KINJO and Taizo IMANO
    • 学会等名
      The 10th Conference of Asian Federation of Middle East Studies Associations (AFMA)
    • 発表場所
      京都大学(京都府京都市)
    • 年月日
      2014-12-14
  • [学会発表] 『和平』と『和解』のはざまで――和平プロセス期イスラエルにおける歴史認識の変容2014

    • 著者名/発表者名
      金城美幸
    • 学会等名
      立命館大学国際関係学部末近浩太ゼミ主催・立命館大学R-GIRO研究会「新しい平和学にむけた学際的研究拠点の形成:ポスト紛争地域における和解志向ガバナンスと持続可能な平和構築の研究」(代表者:本名純)共催
    • 発表場所
      立命館大学(京都府京都市)
    • 年月日
      2014-07-14
    • 招待講演
  • [学会発表] パレスチナ村落地誌の作成とナショナル・ヒストリーの構築2014

    • 著者名/発表者名
      金城美幸
    • 学会等名
      大阪市立大学文学部地理学研究室主催コロキアム・大阪市立大学人権問題研究センター共催
    • 発表場所
      大阪市立大学(大阪府大阪市)
    • 年月日
      2014-06-25
    • 招待講演
  • [学会発表] 変容する『和平』概念――オスロ和平プロセスと二国家解決2014

    • 著者名/発表者名
      金城美幸
    • 学会等名
      京都YWCAブクラ学習会
    • 発表場所
      京都YWCA(京都府京都市)
    • 年月日
      2014-06-15
    • 招待講演
  • [学会発表] パレスチナ/イスラエルにおける歴史学的知の生産――生成・変容とその基盤2014

    • 著者名/発表者名
      金城美幸
    • 学会等名
      人間文化研究機構イスラーム地域研究東京大学拠点グループ2パレスチナ研究班研究会
    • 発表場所
      東京大学東洋文化研究所(東京都文京区)
    • 年月日
      2014-05-18
  • [備考] 立命館大学生存学研究センター「人」紹介ページ

    • URL

      http://www.arsvi.com/w/km19.htm

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公開日: 2016-06-01  

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