本研究の申請期間内の最終目的は、欧州・米国・日本の博覧会における先住民展示のうち、生身の先住民の「人間展示」について、その誕生と地域横断的な転用過程を明らかにすることである。今年度は、主に20世紀において、欧州・米国・日本で行われた博覧会を中心に、各地で開催された近代博覧会の分析を進めた。 欧州については、1900年パリ万国博覧会のほか、1905年リエージュ万博でみられた「コンゴ村」、1910年日英博覧会でみられた「アイヌ村」・「アイルランド村」・「台湾土人村」などの調査や分析を行った。米国については、前年度分析した「セントルイス博」の調査を引き継ぎ、後の博覧会に見られた「人間展示」について整理した。とくに、1915年のサンフランシスコ万博・1933年シカゴ万博でみられた「インディアン村」やキューバやその他の展示施設については、詳しく調べた。日本については、1926年国産振興博覧会・1918年開道五十年記念北海道博覧会、1935年日満興産博覧会など、主に北海道で行われた博覧会について、アイヌの人々の「実物展示」について、資料・新聞を精査し、研究を進めた。 加えて、「人間展示」の現代への影響関係を調査するために、1958年北海道大博覧会や1992年セビリア万博の分析も進めた。 以上の個別博覧会に関わる資料の分析・研究の結果、草創期の博覧会における娯楽要素の強い「人間展示」が、主に19世紀末の米国における人類学・民族学の学知の影響下で、当時の進化論をふまえた「科学的」「学術的」なものに再構成されていったこと、その後、20世紀半ばに、文化相対主義的な展示に再度変容していったことが確認できた。 こうした研究の成果をもとに、2015年12月に立命館史学会大会において、『近代博覧会における「未開の先住民」の「人間展示」』という標題で報告を行った。
|