日本の近代化の課程において「人形」が「女児文化」に位置づけられ、「女性にふさわしいもの」とみなされた歴史に着目し、ジェンダー論および身体論を援用しつつ、近現代における「人形的身体」の創造について考察した。また近代における女性の作り手、特に人形創作にかかわった女性たちの活動を明らかにすることを通して、創造される人形の身体と作り手の性別との連関に対する社会の期待や評価、女性創造者たちの位置づけについて検討した。 最終年後にあたり、2年間の研究成果をミニシンポジウム「近現代日本における「人形/ヒトガタ」とジェンダー」(2015年1月12日於お茶の水女子大学)として報告し、当研究代表者を含む人形研究に関わる研究者3名、女性人形作家1名の計4名による報告とコメンテーター1名によって実施された。 また当研究代表者は、「「人形」をつくること、おくること――近代日本における「少女」と「人形」」(千葉大学大学院人文社会科学研究科 『プロジェクト研究「歴史=表象の現在Ⅱ」』2015年3月、154-162頁)を執筆した。本論文では、先行研究による「少女」の誕生や定義を前提に、「少女」というカテゴリーの形成と近代における「人形」文化との相関関係を追いながら、「少女」への激しいバッシングが行なわれた戦時期に、「少女」が「人形」の創造と贈答という行為を通じて、「少女」の価値を保持していた可能性について検討した。
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