研究課題/領域番号 |
25770004
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
中野 裕考 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 助教 (40587474)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 西洋哲学 / 近代 / カント / 知覚 / 概念主義 |
研究概要 |
カントと現代の知覚論の比較検討を行い、充実した成果を得た。カントの知覚論に関しては、『純粋理性批判』における直観の問題に焦点を当てた。この直観の受容が、空間時間形式に従う感性に依存すると同時に、カテゴリーという概念的理解枠組みに従う悟性にも依存していることを確認することができた。従来の研究においては、カントのテクストに出現する多くの類義語の間の差異についてあまり詰めた議論がなされず、個々の研究者の銘々の感覚に基づいて諸用語が分類され使い分けられる傾向があった。カント研究とも密接に関わりつつカント研究にとどまらずより一般的な視野から行われている、現代の英米圏における概念主義と非概念主義の論争を踏まえることで、本研究は、諸用語の内実についてより慎重で精緻な議論を行うことができるようになったように思われる。すなわち「直観」は感性の受容性を通じて与えられるものだという点は確かだとしても、ここには受容性だけが関わるのか、それとも自発性が何らかの仕方で関わってくるのか。もし後者だとすればその自発性は像を形成する構想力の自発性なのか、判断を通じた認識を形成する悟性の自発性なのか、といった点に、改めて複数の解釈可能性を見据えた慎重な議論ができるようになったように思われる。現代の知覚論を踏まえることで過去の哲学の理解を活気づけると同時に、過去の哲学の理解を更新することで現代の議論に歴史的な支えを供給するという、当初の目論見の一部を達成することができたように思う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カントと現代の知覚論に関して、数度の研究発表を行い、2本の論文を執筆することができた(採録決定済み)。
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今後の研究の推進方策 |
当初は、現代英米圏の知覚論と同時に、20世紀ドイツ・フランスにおける現象学における知覚論とカント知覚論との関係についても研究を進める予定であった。平成25年度は英米圏の方に焦点を当てることの方が多かったため、今年度は現象学における知覚論とカントとの関係について研究を進めたい。
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