カントと現代の知覚理論を題材にとり、古典哲学の内在的解釈と現代哲学の実質的議論との両立を試みた。一方では、現代哲学における知覚理論の展開がカント哲学の内在的理解に影響を及ぼしていることが分かった。つまりカントにおいて判断を伴わない知覚の理論は存在しないと考えられてきたが、近年、知覚を構想力の総合の産物として判断とは区別して扱う可能性が見出されつつある。また他方で、カント哲学の側から現代哲学に対して問題提起することのできる論点もあることが分かった。カントがいち早くその独特な働きに注目した、概念と直観の中間者としての図式である。この図式論の意義を究明することは現代哲学に資するところ大であろう。
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