研究課題/領域番号 |
25770007
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岡本 源太 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (50647477)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ジョルダーノ・ブルーノ / マラン・メルセンヌ / 世界の複数性 / 無限宇宙論 |
研究概要 |
ジョルダーノ・ブルーノの提起した「世界の複数性」の思想をメルセンヌやライプニッツからの批判と対照させながら読み解き、近代以降の人間像と世界像の根幹にある「多様性」概念の再考を試みる本研究は、まず初年度として、当初の研究計画にしたがってブルーノとメルセンヌの関係に取り組んだ。 具体的な考察対象としては、ブルーノ『しるし論』(1583)、『原因論』(1584)、『無限論』(1584)、『最小者論』(1591)、およびメルセンヌ『理神論者の不敬虔』(1624)を取りあげたが、なかでも『しるし論』が、ブルーノの「世界の複数性」の思想の倫理的含意を明確化するにあたって重要であるとわかり、後半はとくにその読解に集中した。また、メルセンヌの著作および先行研究の検討から、「世界の複数性」における多様性と調和の問題を考えるにあたって、近世の音楽論の有する重要性も浮かび上がってきた。西洋における宇宙論と音楽論の並行性は古代のピュタゴラス主義以来のものではあるが、天動説から地動説への転換や火星の楕円軌道の発見などが相次いだ近世の宇宙論においても、そのモデルとして音楽論が明に暗に参照されていたのであり、特に世界の多様性と調和の思想に対する音楽論の影響力は看過し得ない。 さらに、フランスのパリ、イタリアのヴェネツィアとローマで文献調査収集をおこない、近世思想史研究者のフランチェスコ・カンパニョーラ(ゲント大学)と意見交換した結果、近世におけるイタリア・ルネサンス哲学の受容の広がりを再認識することとなり、少なくともメルセンヌによるブルーノ批判の背景として、ルネサンス期イタリアの自然主義哲学とフランス自由思想との関係を解明する必要性を痛感した。ルネサンス哲学の歴史的影響の解明は、国際的にも研究の立ち遅れているものであり、次年度以降もヨーロッパでの文献調査収集をおこないながら取り組む必要があるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近世宇宙論における音楽論の重要性やフランス自由思想へのルネサンス哲学の受容など、当初それほど想定していなかった問題の広がりが認識されたことは、本研究にとって重要な成果であり、次年度以降の研究に向けて着実に成果を積み重ねていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度もひきつづきヨーロッパの各図書館で近世の自由思想関連文献を調査収集しつつ、ブルーノの「世界の複数性」の思想を検討する。メルセンヌとの関係が当初の想定よりも大きな問題系を構成していたため、ライプニッツとの関係に検討を移すのはもう少し遅らせる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入予定であったジョルダーノ・ブルーノ著作集の出版延期により、次年度購入用に回した。 次年度使用額分はブルーノ著作集が出版され次第、その購入に充てる。それ以外は当初の計画に変更はない。
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