ジョルダーノ・ブルーノによる「世界の複数性」論を、後世のマラン・メルセンヌやライプニッツからの批判と対照しながら読み解き、近代以降の「多様性」概念の再考を目指す本研究は、その三年目として、昨年度・一昨年度の研究実績を踏まえて、まずはブルーノ『しるしのしるし』の翻訳注釈に集中的に取り組み、そのうち第1部第1節から第23節までを公表した。また、ルネサンス自然主義から近世自由思想への影響作用の内実を解明するために、ひきつづきフランスのパリとイタリアのヴェネツィアで文献資料調査をおこない、とくにガブリエル・ノーデの呪術論・奇跡論に、歴史論と同様、ルネサンス哲学の影響として自然主義化の進行を認められることが分かった。
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