本研究では、自然環境の保全や資源管理をめぐる倫理的課題を分析し、ボトムアップの保全・再生事業を支える理念と実践プロセスを考察した。地域環境のガバナンスを考えていくうえで、風景や環境の価値認識の差異、土地所有から生じる権利や義務の問題、資源管理を支援・規制するための社会制度、地域のソーシャルキャピタル、人びとの価値観や思いなどといった視点から課題を整理していく必要がある。本研究では、新潟県佐渡市で進めた地域環境整備に向けた対話と協働の実践を通して、これらの課題について分析し、ガバナンスの推進において「多層的コモンズの包括的認識」と「プロセスと成果のオーナーシップの獲得」が重要であることを示した。
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