研究課題/領域番号 |
25770021
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
土井 裕人 筑波大学, 人文社会系, 助教 (80568402)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 宗教学 / 人文情報学 / デジタル・ヒューマニティーズ / 視覚化 / 可触化 / 3Dプリンタ |
研究実績の概要 |
今日、情報に関連した様々な技術や機器が日進月歩で進歩し、人文情報学(デジタル・ヒューマニティーズ、Digital Humanities)を取り巻状況が急速に展開しているのは言うまでもない。こうした状況において、哲学や思想をめぐる領域では人文情報学の活用が模索の途上にあるように思われる。 そこで、本研究においては、この課題についての研究を段階的に進展させてきた。まず、哲学・思想の研究にその知見を取り入れる方法論や具体例について考察を進め、紀元5世紀の新プラトン主義者であるプロクロス(412-485)の『神学綱要』をマークアップし分析したのを端緒に、より浩瀚なプロクロスの『ティマイオス註解』の宗教思想を構成する重要な概念間の関係を視覚化するとともに、こうした人文情報学の手法がテクストを基盤とした思想研究にどのように実用できるかを同じく『ティマイオス註解』によって検討した。これにより、哲学・思想に関する電子テクストの「意味」をコンピュータ上で扱うだけでなく、その結果を視覚化することによってテクストから新たな発見がもたらされるとともに、他の学問分野ともわかりやすく結果を共有することができると示唆された。 平成26年度は、人文情報学の応用可能性として、哲学・思想の教育においてその知見がいかに活かされうるか考察を行った。その際に手がかりとなったのは、これまでに検討した手法のうち視覚化と可触化という、人間の感覚に訴えかける方法である。特に後者については、3Dプリンタの急速な低価格化と普及が進むなか、ものづくりの専門家ではない個人のレベルでも手が届くようになっている。人文学とりわけ哲学・思想の領域ならではの可触化の活用も模索されるべき状況が既に到来しつつあると言えよう。こうした点について、平成26年度は研究を進め成果を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
筑波大学「スーパーグローバル大学創成支援」採択事業キックオフ・ワークショップDigital Humanities Worldwide(2015年2月、於筑波大学)のオーガナイズおよび発表”Application of Visualization to Religious Thoughts”を行い、ハンブルク大学のドルジ・ワンチュク教授といった人文情報学における著名な研究者と共同研究を行う道筋をつけられたことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
人文情報学を応用した哲学・思想研究の可能性は既に望見されているが、人文情報学が今日寄与しうるもう一つの可能性-すなわち教育-については検討が十分にはなされていなかった 。そのため、平成26年度は教育への応用可能性について検討を行ったが、今後も引き続きこのような方向で研究を推進することとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初平成26年度中に購入する予定だった機器の発売が遅れ、年度内の購入ができなくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
上記機器の購入を行う予定である。
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