本研究は、宗教思想の研究に人文情報学の成果を応用することにより、従来の研究方法では検討が容易でなかった内容をより効果的に解明する方法論を模索するという目標を設定した。 研究期間全体を通した実績としては、哲学・思想のテクストをコンピュータにより分析した結果を視覚化することによって哲学・思想の内容の解明に資する方法論を提示したことが挙げられる。特に、文献にあらわされた哲学・思想の内容を視覚化するだけでなく3Dモデルに再構築して3Dプリンタによって出力する方法論を編み出し成果発表を行ったことは、本研究実績の特徴と言えるだろう。これは哲学・思想の研究のみならず他分野の研究者とのコラボレーションにも寄与するものである。 本研究課題は平成27年度までであったが、研究のさらなる進展を図るため期間を1年延長した。その平成28年度は、これまで培った方法論と他の研究者から得たアドバイスから、視覚化と可触化を哲学・思想の専門教育に役立たせるというさらなる応用事例を提示することができた。これは、難解な文献の内容から専門教育において重要な概念を抽出して視覚化と可触化した教材を作成し、大学の授業において実際使用するというものである。 以上の研究実績により、本研究課題では文献を基盤とした宗教思想研究に人文情報学の手法を取り入れながら専門教育にも応用するというサイクルを提示することができ、当初目標を越えた成果を得ることができた。
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