研究課題
本研究は、近代の政教関係を再検討し、ライシテ(非宗教性、政教分離、世俗主義)を共生社会の原理として再構成することを目指すもので、ライシテという政教構造における宗教の公共性について検討するものである。最終年度である平成27年度は、前年までの研究成果を踏まえてアウトプットに力点を置き、国内外の学会や研究会で積極的に発表しつつ論文を執筆することを目指していた。フランスのライシテに関しては、(1)共編著『共和国か宗教か、それとも』を刊行し、ジャン・ジョレスのライシテ理解の特徴を明らかにした。(2)19世紀のライシテと現在のライシテを比較する英語論文を執筆した。(3)フランスにおける「承認のライシテ」とその両義性についての論考を共著『他者論的転回』に寄稿した。(4)「イスラームはいつ、いかにひてフランスの宗教になったのか」を論じた。ケベックのライシテに関しては、フェルナン・デュモンの『記憶の未来』が後続世代にどのように読まれているのかについて、フランス語論文を執筆した。日本については、国際宗教学宗教史会議(IAHR)にて、戦後日本の政治と宗教の関係に関する発表を行なった。研究期間全体を通じては、次の3つの課題に取り組んだ。(1)フランスの歴史のなかで宗教が果たしてきた公共的役割を見直し、社会空間における「宗教」の位置づけを理論的観点からも考察する。(2)ケベックのライシテを特徴づける間文化主義(インターカルチュラリズム)という社会統合理念の理解を深める。(3)日本のライシテの特徴をフランスやケベックと比較する。それぞれの課題につき、一定の成果を挙げることができたと考えているが、昨今の世界情勢を踏まえながら、上記の3つをどのように関連させて全体像を描き直すのかという新たな課題も見えてきている。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 図書 (2件)
Sophia Journal of European Studies
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Bulletin of the Faculty of Foreign Studies, Sophia University
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