研究課題/領域番号 |
25770027
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
後藤 正英 佐賀大学, 文化教育学部, 准教授 (60447985)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / 国際情報交換 / ヤコービ / メンデルスゾーン / 啓蒙主義 / 理性 / 宗教哲学 / 汎神論論争 |
研究概要 |
今年度は、汎神論論争におけるヤコービの哲学的立場の分析を進めると同時に、彼の哲学小説における表現方法を解明するための準備作業を行った。 論文としては、「トーマス・ヴィーツェンマンと汎神論論争(1)」の中で研究成果の一部を発表した。ヴィーツェンマンは、ヤコービとメンデルスゾーンの間で発生した汎神論論争の哲学的争点を明確化し、汎神論論争に対するカントの主張を引き出すうえで隠れた影響力をもった人物であった。この点に注目した有名な先行研究としては、フレデリック・バイザーの『理性の運命』がある。ヴィーツェンマンは、メンデルスゾーンのコモン・センスとヤコービの信仰の間には、真理の試金石を狭義の理性を超えたところに求める点で共通点があるのではないか、という問題提起をおこなった。 ヤコービの理性批判の真意を明らかにするためには、当時の論争状況を丁寧に整理する必要がある。ヤコービは、ベルリンの啓蒙主義者たちの理性への過信を厳しく批判したが、非合理主義者やロマン主義者のような仕方で理性の力を批判したわけではなかった。それは、ヤコービがスピノザの哲学を合理主義哲学の模範としてどれだけ高く評価していたかを考えるならば一目瞭然であろう。ヤコービは、合理主義の帰結を究極にまでつきつめることで、理性自身では解決できない決定不可能な領域を見極めようとしたのである。 今年度は、ヤコービの哲学小説を解明するうえで必要となる幾つかの知見も得ることができた。一例を挙げると、12月に政治哲学研究会でおこなった発表では、秘教的著述と公教的著述を対比させるレオ・シュトラウスの問題関心が、彼のレッシング解釈の基底をなしていることを指摘した。二つの著述方法の関係は、哲学者の採用する表現方法の意味を考えるうえで重要な示唆を与えるものである。さらに、3月の宗教哲学会のシンポでは、世俗言語と宗教言語の関係についても言及した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種の研究活動を通して、哲学論争におけるヤコービの立ち位置を確認するために必要な知見を得ることができた。また、27年度に招聘予定のヤコービ研究者ザントカウレン教授の来日について、本人から内諾を得ることができた。また、講演会の開催にあたっては、一橋大学の大河内泰樹氏と加藤泰史氏に協力を依頼している。以上の点から、おおむね順調に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
27年度に招聘予定のヤコービ研究者ザントカウレン氏の講演について、より具体的な調整作業を行う。研究内容に関しては、ヤコービの哲学小説の分析を開始する。分析のための方法論を獲得するべく、哲学と文学の関係について論じた諸理論を調査する。さらに、初期のヤコービが大きな影響を受けたルソーの文学論や、ヤコービの同時代人のヘルダーやハーマンの思想との付き合わせを通して、哲学と文学の関をめぐるヤコービに固有の立場を明らかにしたい。
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