ヤコービは、カント以後の哲学に多大な影響を与えた人物である。ヤコービは、論争や対話を通して自らの思想を語ったが、彼の思想は、しばしば、非合理で一貫性のないものとして誤解されてきた。ヤコービは合理主義の体系を独特の方法で批判する。ヤコービの哲学は、彼のスピノザへの二重の態度からも明らかであるように、一方で合理的主義の哲学の帰結を引き受けつつ、他方で理性では決定できない領域を残している。ヤコービの理性批判の思想が、啓蒙主義、疾風怒涛、ロマン主義のいずれとも異なる独自性をもつことを明らかにするために、この研究では、『スピノザ書簡』や哲学小説『ヴォルデマール』に見られる論争や表現のスタイルに注目した。
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