研究課題/領域番号 |
25770029
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
折井 善果 慶應義塾大学, 法学部, 准教授 (80453869)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 思想史 / キリシタン / 東西交渉史 / 印刷史 / 日本キリスト教史 / スペイン文学 / イエズス会 / 適応主義 |
研究実績の概要 |
本研究の具体的作業は、①翻訳・翻刻の未だない資料の刊行、および②キリシタン版の海外所在の追跡、に大別される。 本年度の作業の中心は①にあった。申請時に検討予定であったキリシタン写本「吉利支丹抄」(通称)については、幸いにも内藤幹生氏により翻刻が発表されたため、これらを参照しつつ、脚注を加えた草稿を整えることができた。その欧文原典である可能性が高い『祈りと黙想の書』については、当時のヨーロッパにおいて多くの版が出版されており、翻訳に使用された版の特定はまだできていない。したがって、現時点では、ヨーロッパにおけるテクスト・クリティークの成果と歩を一にしながら暫定的テクストを措定して作業をすすめた。両者の対訳分析は草稿がまとまりつつあり、現在発表媒体をリサーチ中である。 もう一方の検討予定資料、すなわち「バレト写本」「ドミニカの抜書」と『祝日の説教集』『諸聖人の説教集』の対訳研究については問題が残された。それは、両者は厳密には“類似性の指摘”に留まり、その他の欧文ソースも参考にされた可能性が否定できない点が明らかになったからである。したがって現時点では、「バレト写本」の成立過程を改めて調査すべく、日本イエズス会が参照可能であった、トリエント公会議以降のミサ典礼書を中心に、より広く類似のテクストに当っていくことが、資料を公刊する以前の課題として残された。 上記②については、J・ラウレス『キリシタン文庫』以来確認されていないいくつかのキリシタン版の所在を再び調査した。その過程で、1940年代から80年代までフィリピン国内を流転した、一連のドミニコ会旧所蔵本の目録に接し、同会のマニラ印刷所と日本人印刷工との関連を示す書籍の情報を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
欧文原典の特定には予想外の時間を要しているが、反面、その作業が諸版のテクストクリティークの作業を進展させることにつながったため。これらの作業はヨーロッパにおいても研究途上にある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度で本研究課題が終了するため、次年度の早い段階で欧文原典を暫定的に措定し、対訳分析に進む予定である。 一方、キリシタン版の海外所在追跡の過程で情報を得た上記書籍について、現在それら旧所蔵本を(不完全なかたちではあるが)所蔵するサント・トマス大学(マニラ)と、同書籍の追跡調査を引き続き行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は研究代表者の産休に該当し、予定していた海外調査が延期となったため、余剰が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度延期となった海外調査を翌年度に行うこととし、そのために本年度の余剰金を充てることとする。
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