本研究の目的は、近代フランスの哲学者、美学者たち、より正確には、一九世紀後半から二〇世紀初頭にかけて活躍したフランスの哲学者、美学者たちが、カントをはじめとするドイツ近代哲学、美学をどのように受容し、そのうえでいかにして自身の思想を育てたのかを検証、相互比較することにより、当該時期のフランス美学を言わば立体的に把握しなおし、もって従来顧みられることの少なかった当該時期のフランス美学にあらたな光を投げかけるとともに、いまだ解明されざる部分のおおい近代哲学、美学上の独仏関係の一端を明らかにすることであった。 具体的には、シャルル・ルヌーヴィエ(1815-1903)、ジュール・ラシュリエ(1832-1918)、エミール・ブートルー(1845-1921)、オクターヴ・アムラン(1856-1907)、アンリ・ベルクソン(1859-1941)、ヴィクトール・バッシュ(1863-1944)、レオン・ブランシュヴィック(1869-1944)といった哲学者、美学者を主たる調査対象とした。調査の方法について言えば、著作のテクスト内在的な分析をつうじ、まずは彼らの術語体系を把握したうえで、講義の記録等の二次的資料なども積極的に活用してドイツ哲学、美学への言及をひろいながら、彼らの解釈するかぎりでのドイツ哲学、美学が彼ら自身の術語体系の編成、再編成におよぼした影響を見さだめ、そのありようを相互に比較検討した。 とくに、ラシュリエやベルクソンに関する調査の結果については、研究期間中に様々なかたちでこれを公表することができた。
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