本研究は、ハインリヒ・シェンカーやその周辺の音楽家による音楽理論・分析、それ以降のシェンカー理論・分析における方法論的特徴や価値観を分析し、戦前ドイツと戦後アメリカの音楽理論学界の諸特徴を学術文化の事例研究として明らかにした。シェンカーと同時代の音楽理論家としてF. イェーデやG. ベッキングをとり上げ、視覚化の観点から同時代性を拾い出した。また、シェンカーにおいて演奏法上の特徴が理論・分析的観点といかに関連しているのかも調査した。戦後アメリカについては、リズムの観点から代表的なシェンカー研究者の学術的欲望に迫ると同時に、シェンカー死後から現在までの理論・分析に観察される方法論を歴史化した。
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