アドルフォ・サルコリのルーマニアでの活動の洗い出し、過年度に発見したサルコリの日本での活動の検証を中心に研究を行った。過年度、フィリピンの調査では「The Manila Times」に詳細に公演 状況が記載されており、サルコリの共演者の名前、6つのオペラにほぼ主演として出演していたこと、サルコリが特に興味を持って取 り上げられていたことが明らかとなったが、ルーマニアでの調査は、サルコリを含むオペラ記事が少なく、調査は難航した。ルーマニアには1903年、1904年、1906年、1910年にサルコリが滞在した記録があり、1903年1月22日、1904年10月13日、11月26日、12月1日、1906年11月1日、17日、11月19日付けのアデヴェルル紙(Adeverul)に、サルコリが出演した記事が見られた。その他にも、「ルーマニア・ムジカーレ」に、サルコリの共演者の名前、45名のオーケストラ、24名のバレリーナ、40名の合唱により、トスカ、アイーダ、メフィストフェレ、ボエーム、トラヴィアータ、ファウスト、サムソンとデリラなどの演目で公演を行ったことを見つけた。また、パリからの特別ゲストとして、当時活躍していたコロラトゥーラソプラノ、Siegrid Arnoldson(1861- 1943)とも共演したことも明らかになった。現在、資料調査の折に発見した資料の整理も終えた。また、サルコリに関する手紙 、史料のデータベース化や、翻訳などの作業も、概ね予定通り進んだ。
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