研究課題/領域番号 |
25770046
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鎌田 由美子 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (70609768)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 美術史学 / イスラーム美術 / 東方アジア / コレクション形成 |
研究概要 |
2013年7月に、東南アジアでのイスラーム美術のコレクションの状況・展示方法を調査するため、ブルネイのバンダル・スリ・ブガワンにあるブルネイ博物館のイスラーム美術ギャラリーを調査した。さらに市内のモスクや国立宝物館などを訪れ、ブルネイの掲げる「マレー・イスラーム王政」に沿ってイスラーム美術やモスクなどの建築物がどのように利用されているのか考察した。その成果は「ブルネイ博物館におけるイスラーム美術展示」として『早稲田大学高等研究所紀要』6(2014)にまとめた。 また、2014年2月には、早稲田大学において「イスラーム美術コレクションの形成―ヨーロッパ、アメリカ、エジプト、アジア―」と題する国際セミナーを企画・開催し、マレーシア・イスラーム美術館、シンガポール・アジア文明博物館、ブルネイ博物館のイスラーム美術展示の特色・成り立ちを比較考察した内容を発表した。同国際セミナーにおいては、イスラーム美術史研究の著名な研究者であるウォルター・デニー教授(マサチューセッツ大学教授)に、イスラーム美術がヨーロッパ・アメリカでどのようにコレクションされ、展示されてきたのか、また現在の展示の問題点について講演していただいた。また、真道洋子博士(早稲田大学)にはカイロのイスラーム芸術博物館の成り立ちや2010年のリノベーションによってどのように展示が変化したのかを報告していただいた。 国内では、所蔵されているイスラーム美術品がどのように展示されているのかを考察する目的で、東京国立博物館、徳川美術館、MIHO MUSEUMを訪れた。また、東方アジアのイスラーム美術品についての論文やカタログなど、出版物によるデータ収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終的な目的は東方アジアにおいて①イスラーム美術がどう発展したのか、②イスラーム美術品がどのように受容されたのか、③いかにイスラーム美術品がコレクションされ、展示されてきたのかを明らかにすることである。 本年度は、事前の計画に基づき、国内ほかブルネイにおいて調査を行い、上記の課題について研究を行った。調査および研究の結果は、調査報告書「ブルネイ博物館におけるイスラーム美術展示」(『早稲田大学高等研究所紀要』6)として出版したほか、早稲田大学で「イスラーム美術コレクションの形成―ヨーロッパ、アメリカ、エジプト、アジア」と題する国際セミナーを開催し、申請者自身も東南アジアにおけるイスラーム美術の受容について報告を行った。この国際セミナーでは、発表を行った国内の研究者と、アメリカから招聘した研究者に加えて、エジプト大使館員や学生も活発な議論に加わり、最新の研究内容を、広く一般に公開することができた。 また、イスラーム美術関連書籍の収集にも努めた。調査、研究を活発におこなっただけでなく、学術的、社会的貢献となるこれらの研究成果も残すことができたため、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は、研究計画に沿ってインドネシアでの調査を行う予定である。モスクほか、インドネシア国立博物館にどのようなイスラーム美術品があるのか、それらがどのように展示されているのかを調査し、これまでに調査したマレーシア、シンガポール、ブルネイの場合と比較考察する。 また、出版物や調査によって集めた東方アジアのイスラーム美術品を、メディアごと、機能・意味ごと、流通の形態ごとに分類する作業を継続していく。それらを欧米にコレクションされているイスラーム美術品と比較し、その特徴を考察する。 同時に、近世から近代の日本の工芸品のデザインにイスラーム圏の美術品に特徴的なモチーフが取り入れられたものがあるので、そうしたイスラーム風のデザインを摂取した経緯や意図についても調査・考察を進める予定である。研究の成果は、学会等で報告後、紀要または学会誌に投稿する予定である。
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