研究課題/領域番号 |
25770049
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研究機関 | 京都精華大学 |
研究代表者 |
鈴木 堅弘 京都精華大学, 人文学部, 研究員 (80567800)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 説話文学 / 寺社縁起 / 仏教絵画 / 明治時代 / 文明開化 / 宗教民俗 / 地方文化 / 絵巻物 |
研究実績の概要 |
2014年度の研究課題は、在地における高僧絵伝の近代化という文化位相を、江戸期と明治期の図像表現や伝承記述の差異から明らかにすることであった。以下の調査・研究発表を実施した。 1.作品調査:次の7件の高僧絵伝・縁起絵巻に関する閲覧・撮影・実測を行った。(1)「山中温泉縁起絵巻」(石川県山中医王寺・追加調査)、(2)「妙応寺妙応大姉縁起図会」(岐阜県関ケ原町)、(3)「元三大師縁起絵巻」(東京都寛永寺)、(4)「七人童子絵詞」(茨城県水戸市)、(5)「慈眼大師縁起絵巻」(東京都寛永寺)、(6)「紀道大明神縁起絵巻」(和歌山県日高郡)、(7)「増福院縁起絵巻」(福岡県宗像市) 2.研究発表と論文:本年度は昨年度の資料調査を中心に、次の成果発表を実施した。(1)「『深大寺縁起絵巻』に関する図像と詞書の研究報告」(関西寺社縁起研究会)、(2)「天台宗派寺社縁起絵の資料紹介を中心に-毘沙門堂補陀洛山建立日記絵図・元三大師縁起絵巻・出雲寺毘沙門堂略縁起など-」(関西寺社縁起研究会)、(3)「『深大寺縁起絵巻』と深沙大将説話 ― 水神信仰・関東天台・天海僧正 ―」(説話・伝承学会)また、以下の学会誌等に論文を掲載した。(1)「「山中温泉縁起絵巻」から読み解く霊場と信仰」(佛教藝術338号)、(2)「「荻野堂縁起絵巻」と洞門説話」(説話・伝承学23号) 3.研究成果と課題:2014年度は、地方寺院での資料調査を実施すると同時に、研究成果報告を行った。成果報告では、在地の自然信仰や民話伝承の要素が、寺社を媒介に、縁起絵巻の絵図や物語に取り込まれていく経緯を明確に示した。くわえて、諸地域の高僧絵伝が、近世後期の時層にて、在地民への受容される宗教機能を浮き上がらせることができた。しかし、前近代と近代における高僧絵伝の伝承パラダイムの変遷を捉えるまでには至っておらず、この点が今後の課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、これまでの研究計画に加えて、新たに3つの追加課題を設定し、高僧絵伝のフィールド調査を実施した。結果、関東から九州にかけての諸地域の絵伝を細かく調査するに至り、多くの図像資料を閲覧・撮影することができた。 また、これまでの研究成果を論稿にまとめ、研究誌や学会誌にて報告した。資料調査および成果報告は、当初の計画通り進んでいる。とくに追加課題の調査にて、新たなテーマを設定するに至った。 今後は、それらの研究テーマに関する考究、解明を積極的に進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、研究の最終年度にあたるため、これまでの資料調査に基づく成果報告を論稿にて積極的におこなう。その際に、追加の資料調査等が必要となる。秋期までに追加の資料調査を実施する。また、本年12月に、これまでの研究成果のまとめとして、公開シンポジウムを開催する予定である。 さらに、「山中温泉縁起絵巻」と「荻野堂縁起絵巻」の研究成果を地元に還元するため、石川県山中町と埼玉県秩父市にて、市民向けの研究報告会を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた東北地方への資料調査が、震災の影響および寺院側の都合により実施できず、26年度の研究費に未使用額が生じた。当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に大きな変更はない。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、前年度の費用を含め、新たな課題に取り組むことで現地調査および学会発表の回数を増やし、調査・研究を積極的に進めていく。また市町村での地元民への研究報告会を実施する。
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