研究課題/領域番号 |
25770049
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研究機関 | 京都精華大学 |
研究代表者 |
鈴木 堅弘 京都精華大学, 人文学部, 研究員 (80567800)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 寺社縁起絵巻 / 掛幅縁起絵 / 仏教説話画 / 廃仏毀釈 / モダニズム / 明治時代 / イコノグラフィー / 地方 |
研究実績の概要 |
2015年度は、以下の調査・研究発表・学術シンポジウムを実施した。 1.作品調査:次の3件の高僧絵伝・縁起絵巻に関する閲覧・撮影・実測を行った。(1)「風光寺開基縁起と絵画」(長崎県平戸市風光寺・調査)、(2)「増福院縁起絵巻の縁起資料」(東京国立博物館・追加調査)、(3)「笹井観音堂の絵馬類」(埼玉県狭山市・調査) 2.研究発表と学術シンポジウム:昨年度の資料調査をもとに、下記の高僧絵伝・寺社縁起絵巻に関する研究発表を昨年から本年にかけて実施した。(1) 「『深大寺縁起絵巻』と深沙大将説話 ―水神信仰・関東天台・天海僧正―」(説話・伝承学会・2015年5月)、(2)「「増福院縁起絵巻」と語られる怨霊譚―寺社縁起から「九州一の怪談」へ―」(学術シンポジウム「俗化する高僧絵伝と明治時代」・2015年12月)また昨年度は、本研究に関する公開学術シンポジウム「俗化する高僧絵伝と明治時代」(於京都キャンパスプラザ/12月26日)を企画・実施し、高僧絵伝の近代化に関する学術講演・パネルディスカッションをおこなった。くわえて昨年7月27日に、本研究の成果を地域社会に報告・還元する目的で、石川県山中温泉町「芭蕉の館」にて、「絵巻物から読む山中温泉―「山中温泉縁起絵巻」について―」と題し、市民講座を実施した。 3.研究成果と課題:2015年度は、地方寺院での資料調査を積極的に行うと共に、同研究課題に関する学術シンポジウムを実施し、文学・美術史・民俗学・宗教学を専門とする諸先生方の発表・パネルディスカッションを通じて、高僧絵伝と明治時代の文化位相に関する諸問題を明らかにした。一方、一昨年度に調査した高僧絵伝に関する発表を論文にするまでには至っておらず、この点が今後の課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、これまでの研究計画にしたがって、高僧絵伝・寺社縁起絵巻の現地調査を実施し、とくに九州の諸地域の絵伝を調査し、多くの図像資料を閲覧・撮影することができた。また、本研究課題に関する公開学術シンポジウム「俗化する高僧絵伝と明治時代」(京都キャンパスプラザ)を実施し、高僧絵伝・寺社縁起絵巻と明治時代の文化位相に関する諸問題を明らかにすることができた。また現地調査や資料調査はおおむね当初の計画通り進んでいるが、その成果報告としての論文執筆が遅れており、今後は、これまでの調査内容をもとに積極的に論文執筆を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は、研究最終年度であったが、これまでの資料調査に基づく研究成果を論稿にまとめることができず、本年度はこれまでの調査研究をもとに論文執筆を積極的におこなう。その際に、在地の伝承資料等の追加調査が必要となるため、秋期頃までに追加調査を終え、随時、論文発表をしていくつもりである。また、昨年度の公開学術シンポジウムの内容をまとめた論考集を編む計画を現在進めており、来年度の初めには書籍として出版する予定である。さらに本年度中に、「荻野堂縁起絵巻」の研究成果を地元に還元するため、埼玉県秩父市にて、市民向けの研究報告会を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた資料調査が、寺院側の都合により実施できないことがあり、急遽、新たなテーマを設定し、調査先の寺院を変更するなどの事態が生じたため、27年度の研究費に未使用額が生じた。当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に大きな変更はない。また研究計画の最終年度に実施予定であった埼玉県秩父市での「荻野堂縁起絵巻」に関する地元への研究成果報告会を行うことができず、そのため次年度への使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、秋期までに「増福院縁起絵巻」に関する福岡県への追加調査を実施し、その旅費と調査費用に昨年度の未使用額の費用をあてる。また「荻野堂縁起絵巻」に関する地元への研究成果報告会を実施する会場費や旅費等としても用いる。 以後、残りの執行額は論文執筆のための書籍購入や報告書を編むための費用として使用する予定である。
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