最終年度である本年度は、昨年度までの調査の結果によって得られた新発見資料(青森県上北郡六戸町海傳寺所在の如来立像)の存在を踏まえて更に調査を進めた。まず、新発見資料の作風について深く検討するため、その前後に制作されたと想定される作例との比較を行った。比較作例としては、新発見資料同様行道が作仏を始めた初期段階の制作である九州宮崎地方に伝存する作例を現地で実見した。また、木喰行道ならびに白道に関わるさらなる新発見資料の探索に努め、白道作の可能性が高い北海道正隆寺の子安地蔵菩薩像の調査・撮影を実施した。本作については、調査概要から木喰作である可能性が高いことが想定されたが、今後深く考察する必要がある。 3年間という研究期間を通じた一連の調査の中で、今まで木喰仏が未確認だった東北地方において新資料を発見することができたことは大きな成果である。さらに新出資料を検証することにより、それが現存最古の作例であると想定され、行道が北海道から作仏を開始したという従来の定説を覆すこととなった。以上のような本研究の成果により、今後の木喰研究において新たな局面を開くことができた。
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