平成27年度は、これまでの二年間で実施した調査の資料を整理し、その分析を進め、論文や著作にまとめた。 本研究は、日本および東アジアで制作されている人形燈籠(lantern)における①制作プロセス②制作の担い手③社会的背景を明らかにし、その研究成果をもって、④地域間交流の契機とすることを目的としている。 ①制作プロセスについては、人形灯籠の表面に用いる材料によって、骨組、内部照明の設置などの技法に明らかな違いが生じることが明らかになった。また、人形燈籠表面の描写技法については、地域間で写実性の追求という点で大きな違いが存在することが明らかになった。これらの研究成果については、『津軽地方の「人形ねぷた」と中国・台湾の「花燈」の制作技法の比較分析』にて詳細を論じている。②制作の担い手については、日本および東アジアの両地域において、制作を総括する中心的担い手が人形燈籠制作を専業で生業としているが、それ以外の担い手については専業ではなく、他の仕事と兼業で従事している事例が多いことが明らかになった。③社会的背景については、日本における事例では、神事や年中行事を起源に有し、現在では街中を練り歩く運行という形態の祭事が多いが、中国や台湾では、旧正月の寺院の装飾に起源を有し、展示という形態の祭事が多い。現在では、寺院以外なども展示の会場となっている。④地域間交流の手段として、研究計画では国際的なシンポジウムの実施を考えていたが、中国・台湾の制作の担い手の方々の訪日の調整が困難であることなどから、計画を変更した。シンポジウムについては青森県弘前市において、平成27年9月に「組ねぷたシンポジウム」が実施された際、申請者はコーディネーターを務め、中国や台湾の制作事例を講演する機会を得た。また、本研究の成果は中国語にも翻訳され、中国や台湾の制作の担い手の方々に中華花燈藝術學會を通して報告された。
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