研究課題/領域番号 |
25770059
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
有澤 知乃 東京学芸大学, 留学生センター, 准教授 (90588906)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 芸能 / ジェンダー / 中華街 / 華僑 / 若者 / 音楽 / 舞踊 / 教育 |
研究実績の概要 |
横浜山手中華学校(大陸系)と横浜中華学院(台湾系)の二校を対象に実地調査を行った。前者では、音楽の前任教員及び現職教員からの聞き取り、授業見学を行った。その結果、音楽の授業内容は、1950年代から1970年代には中国本土での社会主義革命や文化大革命に強く影響されていたことが明らかになり、社会主義や毛沢東を賛美する歌曲が多く用いられていたことがわかった。しかし、中国における社会事情の変化や、日本社会に定着が進む老華僑のニーズの変化によって、現在は、中国の歌曲や楽曲を収めた中国語の教科書に加えて、日本の公立学校で使用されている教科書も用いられ、中国と日本、双方の文化に通じた児童生徒を育成しようとしていることが分かった。後者の学校では、現職の校長及び音楽と民族舞踊・獅子舞の教員からの聞き取りを行い、授業見学を行った。その結果、音楽の授業では台湾で使用されている教科書がそのまま使われており、日本の音楽教材は補助的にしか用いられていないことがわかった。これは学校の教育方針である「民族教育」すなわち中華民国の国民としてのアイデンティティ教育という柱にのっとって音楽教育が行われている結果であることが明らかになった。また、民族舞踊・獅子舞の授業では、前者は女子のみ、後者は男子のみが参加することになっており、指導者が女性らしさ(前者)、男性らしさ(後者)を表現するための具体的な所作について指導している様子を観察することができた。音楽の授業では男女別の指導はされていないのに対して、民族舞踊・獅子舞などの身体的芸能では明らかにジェンダー表現を重視する教育が行われていることがわかった。大陸系と台湾系の学校に関する比較調査を行ったことで、双方の教育方針の差が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
横浜における二校の中華学校それぞれを実地調査することができた。指導者からの聞き取りや授業見学を行うことができ、指導方針を明らかにすることができた。また具体的な教材を入手して分析を進めることができた。しかし児童生徒の意識に関する調査が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
横浜における二校の中華学校において、児童生徒へのアンケート調査及び個別インタビューを行い、研究の理論化と報告を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外に発注していた書籍の入荷遅れによる。
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次年度使用額の使用計画 |
入荷が遅れていた書籍の購入に使用する計画である。
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