28年度はデジタルネガからPiezographyの研究へと比重を移し、その美術的活用を視野に入れ、インクジェットプリンターにおける今までになかった表現を目指した研究を行った。 写真プリント技術の向上や更なる情報収集を目的として、古典技法からデジタル技術を備えたラボ等、様々な視察を重ねた。同時に東京藝術大学学生及び同大学写真センタースタッフに向けた実践的な講義を行った。この講義にてPiezographyの見識を高め、技術実践や作品制作における今後の活用法を討議したことは、本研究において有意義な機会となった。 さらに28年度末は作品としての写真プリントの画質に関しての研究調査として、インクジェットプリント作品を多数収蔵している北海道東川町文化ギャラリーへ赴き、銀塩プリント作品とインクジェットプリント作品の相違等を比較する視察を行った。そこで実際に作品を並べて詳細を目視、確認を行う貴重な機会を得ることができた。また同時期に国立近代美術館のプリントスタディにてヴィンテージプリント(主に1890年代から1900年代前半の写真、フォトグラビア等)を中心に閲覧したが、どちらも本研究において非常に重要な視察となった。 なお、研究期間全体を通じて、特にPiezography研究においては、他のインクジェットプリンターを超える、黒の階調表現の特徴を捉えるに至り、新たな美術表現への活用に一定の成果を得たと言える。その特徴を捉えた成果物を中心に、2017年中に展覧会という形式にて尾道市光明寺會館にて成果発表を行うことを予定している。公共の場で情報や技術を開示し、発表することでその成果を報告するものとする。その他、成果発表として、2017年1月18日に東京藝術大学写真センター特別レクチャーを開講。同年5月下旬に尾道市光明寺會館にて成果報告としての講義を行うことを予定している。
|