本研究において触覚的教育は芸術表現と教育を繋ぐものであるものとして実践を通した研究を行った。研究全体を通して実施した研究は可塑性素材として陶土や石膏、泥素材として漆喰を用いたワークショップを複数回行った。各活動において加工素材に印された痕跡を触覚による外界世界への自己の働きかけと捉え、行為そのものを芸術表現として提示することができた。 本研究では造形活動を外界世界への働きかけと捉え、触覚による自己表現と位置づけた。陶土を用いたワークショップでは対象とした児童及び保護者、教職員合計約330名による叩き込み技法を用いた陶板制作を行いモニュメント作品として対象小学校中庭に設置した。さらに泥素材として漆喰を用いたレリーフ制作やそれを踏まえた照明作品の制作を通して、触覚により施された凹凸は陰影によって鑑賞され、触覚的働きかけは視覚的認識に換算され鑑賞されることが可能となった。 身体的活動の痕跡として素材に残された凹凸を表出した者が活動過程において自己の再認識として鑑賞することで更なる行為へと連続性を生み出すことになった。このことは素材や表出または表現されたものによって外界世界を体感し、さらなる外界世界への働きかけを繰り返す循環作用といえる。可塑材や泥素材の特徴を生かした内的世界と外界世界の触覚による循環と捉えることができた。 本研究課題は芸術表現における一般的な意図的作品制作とは異なり、可塑材や泥素材に働きかけた自己を素材に写し取られた自己として鑑賞の対象とすることである。また可塑性素材は素材から行為が触発され、外界世界へ働きかける欲求と重層化した痕跡を残すものである。このことは触覚による表現を純粋に芸術表現活動と捉えることを可能にした。
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