研究課題/領域番号 |
25770064
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
輪島 裕介 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (50609500)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 大衆音楽 / 放送 / 家庭 / 教養主義 / 民謡 / アイドル / 演歌 / ダンス |
研究実績の概要 |
平成26年度は、昨年度行った戦後日本の大衆音楽と放送にかかわる基礎的な調査に基づき、事例研究を積み重ね、積極的に発表した。非英語圏の大衆音楽に関する国別の比較研究を行う英国の論集シリーズの日本編に、演歌についての論文を寄稿した。そこでは、演歌ジャンルの成立において、昨年度研究を進めた放送音楽の教養主義的な傾向が、一種の仮想敵となったことを強調した。同論文は、現在、台湾での翻訳企画が震央中である。また、研究代表者が「カタコト歌謡」と呼ぶ、外国語風に日本語を発音する大衆歌謡についての日本語論文を学術論文集に寄稿した。また、日本音楽著作権協会の周年記念刊行物に演歌について寄稿し、そこでも放送メディアによって定着した国土の感覚が、70~80年代における演歌の「国民的」な性格と不可分なものであったことを強調した。さらに、昭和以降の大衆歌謡を「踊り」という観点から概観する新書を刊行した。26年度の中心的な研究主題であるアイドル歌謡について1章を設け、アイドル歌謡と結びついた踊りを視覚的に伝達するメディアとしてのテレビの機能について深く検討した。 口頭発表では、平成26年4月にスロヴェニアのリュブリャナ大学で、日本内外の大衆音楽における「日本」表象について検討する英語講演を行った。6月には、国際交流基金の学生交流事業において、アメリカの大学生を対象に、1970年代以降の日本の大衆音楽について概略的な講演を行った。上記2つの講演では、戦後日本大衆音楽における放送の重要性を強調した。平成27年2月には、英国ロンドン大学ゴールドスミスにて、1960年前後におけるラテンアメリカ系音楽の環太平洋的な受容について英語講演を行った。これは、中華圏でオフビート・チャチャ、日本でドドンパと呼ばれた音楽スタイルを主な事例とするもので、ドドンパの日本における浸透におけるテレビCMの役割について強調した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
英語論文1本、日本語論文2本を単行本(論文集)に寄稿し、さらに単著を書き下ろした。英語での講演を多く行い、日本の大衆音楽について、さまざまな聴衆を対象に国際的な発信を積極的に行った。さらに、レコード産業及び放送局の関係者と多く交流する機会を持ち、公式、非公式問わず多くのインタヴューや対話を重ねた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の中心的な主題であったアイドル歌謡についての研究をまとめ、平成27年6月~7月に行われる国際ポピュラー音楽学会大会において研究発表を行う。また、研究期間を通じて新たに中心的な主題として浮上してきた環太平洋圏のトランスナショナルな文化流通と放送メディアの関連について、7月に名古屋大学で開催される台湾と日本の文化交流に関する国際シンポジウムに参加する予定である。また、研究課題の最終年度にあたって、3年間の実績を報告書または単著にまとめる。
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